3伝票制と5伝票制について

1、3伝票制とは

3伝票制は、会計処理における記帳方法の一つで、入金伝票、出金伝票、振替伝票の3種類の伝票を使って取引を記録する仕組みです。この方法は、日本の多くの企業で採用されています。

3伝票制、入金伝票、出金伝票
振替伝票について

メリット
・経理処理の効率化: 現金の入出金取引を専用の伝票で処理するため、現金の動きが明確になり、
 記帳がムーズになります。
・分業の促進: 各伝票ごとに担当者を分けることで、経理業務の分業が可能になります。

デメリット
・複雑な取引への対応: 振替伝票以外の伝票では、現金以外の複数の科目が関係する複雑な取引を
 処理しにくい場合があります。
・伝票の管理: 複数の伝票を扱うため、管理が煩雑になることがあります。

2、5伝票制とは

5伝票制とは、簿記における伝票制の一種で、入金伝票、出金伝票、振替伝票、仕入伝票、売上伝票の5種類の伝票を使用して取引内容を処理する方法です。この伝票制は、主に掛け取引(後払い・後払い)が多い小売業や卸売業などで利用されています。5伝票制で使用される伝票は以下の通りです。

5伝票制、入金伝票、出金伝票、振替伝票、仕入伝票、売上伝票について

1)入金伝票(にゅうきんでんぴょう)

会社に現金が入金された取引を記録します。
入金伝票は、現金や預金が会社に入ってきた取引を記録するための書類です。具体的には、売掛金の回収、借りていたお金の返済、現金での売上など、お金を受け取った際に作成します。

  1、入金伝票の主な役割

・取引の記録: いつ、誰から、何のために、いくらお金を受け取ったかを明確に記録します。
・正確な会計処理: 帳簿への記帳を正確に行うための元になる資料となります。
・お金の流れの証明: 実際に現金や預金が増えたことを客観的に証明する証拠となります

2、記載される主な項目

一般的な入金伝票には、以下の項目が記載されます。

・日付: お金を受け取った日
・勘定科目: どの名目で入金されたか(例: 売掛
 金、受取手形、雑収入など)
・摘要: 具体的な内容(例: ○○商事からの売掛
 金入金、現金売上など)
・金額: 受け取った金額
・相手先: お金を受け取った取引先や個人

入金伝票について

2) 出金伝票(しゅっきんでんぴょう)

会社から現金が出金された取引を記録します。
これは、現金での支払いがあった場合に作成するもので、入金伝票と対になる伝票です。具体的には、現金で交通費や消耗品を購入した時、あるいは取引先に現金で支払った時などに作成されます。

1、出金伝票の主な役割

・経費の記録と証明: いつ、何のために、いくら現金で支払ったかを明確に記録します。

・帳簿への正確な記帳: この伝票に基づいて、帳簿への仕訳が正確に行われます。

・領収書の代わり: 冠婚葬祭のご祝儀・香典や、自動販売機での購入、電車・バス代など、領収書が発行
されない場合に、その支払いを証明する書類として利用できます。

2、記載される主な項目

一般的な出金伝票には、以下の項目が記載されます。

・日付: 現金を支払った日
・勘定科目: 支払いの名目(例:消耗品
 費、旅費交通費、接待交際費など)
・摘要: 具体的な内容(例:〇〇文具店
 での事務用品購入、〇〇駅までの電車
 代など)
・金額: 支払った金額
・支払先: 現金を支払った相手先や取引先

出金伝票について

3) 振替伝票(ふりかえでんぴょう)

現金の動きを伴わない取引を記録するための書類です。
現金でのやりとりが発生する入金伝票や出金伝票とは異なり、現金以外の取引(掛け取引や預金口
座間の振替など)で使われます。

 1、振替伝票の主な役割

・現金以外の取引記録: 売上を「売掛金」として計上したり、仕入れを「買掛金」として記録した
 りするなど、現金のやりとりがない取引を記録します。

・複式簿記の基本: 借方と貸方の両方に勘定科目と金額を記入することで、取引全体を詳細に記録
 します。これは複式簿記の原則に沿ったものです。

・会計ソフトでの利用: 会計ソフトでは、入出金以外のすべての取引をこの「振替伝票」の形式で
 入力することが一般的です。

2、記載される主な項目

・日付: 取引が発生した日
・勘定科目:
・借方勘定科目: 取引によって増加したもの
 や減少した費用など
・貸方勘定科目: 取引によって減少したもの
 や増加した収益など
・金額: 借方と貸方で同額になるように記
 載します。
・摘要: 取引内容を具体的に記載します。

振替伝票について

 3、振替伝票の具体例

        取 引 内 容  借  方  貸  方
商品を掛け(後払い)で10万円売り上げた場合売掛金 100,000円売上 100,000円
銀行の普通預金口座から定期預金に50万円を振り替えた場合定期預金 500,000円普通預金 500,000円

  

4)仕入伝票(しいれでんぴょう)

仕入伝票(しいれでんぴょう)は、商品を仕入れた取引を記録するための伝票です。これは、すべての伝票制で使われるわけではなく、主に「5伝票制」を採用している会社で用いられます。 仕入伝票は、業界ごとに専門性に沿った「統一伝票」が広く普及しています。下記のような業界で「統一伝票」が広く利用され、取引に関する情報の統一と共有を行っています。

1、主な統一伝票

主な統一伝票は、下記のとおりです。

  • チェーンストア統一伝票 (B様式): スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなど、広
     範な小売業界で使用されます。
  • 百貨店統一伝票 (A様式): 百貨店との取引で使われます。
  • 問屋統一伝票 (C様式): 繊維や生活用品、外食食材業界などの卸売業者との間で使われます。
  • 新家電統一伝票 (E様式): 家電業界で使われる伝票です。
  • 業際統一伝票: 業界を超えた取引で使用されます。
仕入伝票について
チェーンストア統一伝票
百貨店統一伝票

2、「統一伝票」の役割

《主な役割とメリット》

〇 業務の効率化
発注・納品・請求の一元管理: 発注から納品、仕入、請求までのプロセスを一つの統一されたフ
 ォーマットで行うことで、双方の事務処理を大幅に効率化できます。
伝票作成の手間削減: 各取引先ごとに異なる指定伝票を作成する必要がなくなるため、特に多く
 の小売店と取引するメーカー・卸売業者は、伝票作成にかかる時間とコストを削減できます。
在庫管理の精度向上: 統一伝票には、商品コード(JANコードなど)、数量、単価といった情報が
 正確に記載されるため、納品された商品の在庫管理が容易になり、ミスの削減につながります。

〇 企業間取引の円滑化
情報の標準化: 伝票のサイズや記載項目が統一されているため、紙ベースのやり取りだけでな
 く、システムへの入力もスムーズになります。これにより、取引先とのデータ連携が円滑に行
 えます。
システム対応の容易化: 統一されたフォーマットであるため、専用の伝票印刷ソフトや販売管
 理システムが利用しやすく、自動化が進みます。特に、手書きからコンピュータへの移行が容
 易になりました。

〇 コスト削減
印刷コストの削減: 各社が個別に伝票を特注するよりも、規格品である統一伝票を大ロットで購
 入する方が、印刷コストを抑えられます。

3、統一伝票の種類

チェーンストア統一伝票には、取引形態や利用する機器に合わせていくつかの種類があります。
手書き用: 手書きで記入するタイプ。
ターンアラウンド用: 発注データを印字した伝票を納品時に使用し、それを仕入伝票として戻す
 ことで、二重入力の手間を省くタイプ。
OCR用: 光学式文字読み取り装置(OCR)で読み取れるよう、特定の書式で印字されたタイプ。

このように、チェーンストア統一伝票は、取引に関わる企業全体で情報共有と業務効率化を実現するための重要なツールとして機能しています。

5)売上伝票 (うりあげでんぴょう)

会社の会計処理のために、商品の売上取引を社内で記録するための書類です。売上伝票は、商品の納品書や請求書と同時に売上に関する取引を記録するために、同時に印刷するケースが多く見受けられます。原則として、相手勘定は売掛金(うりかけきん)となります。

1、売上伝票の主な役割

会計上の取引(特に「掛け取引」)が発生した際に、その事実を正確に記録します。この伝票を基に、会計帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など)が作成されます。

取引内容の証明: 誰に、何を、いつ、いくらで販売したかを記録し、取引が正しく行われたこと
 を証明します。
請求書の作成: 売上伝票の情報を基に、後日、請求書を作成します。
売掛金の管理: 未回収の代金(売掛金)を管理するための重要な書類となります。

2、記載される主な項目

・伝票番号
・発行日
・取引先名
・商品名、数量、単価、金額
・消費税額
・合計金額

売上伝票について

まとめ
Q、5伝票制を使う企業はあるのか

A、はい、5伝票制を利用する企業はあります。
特に、小売業・卸売業・製造業・建設業のような企業で採用される傾向があります。

これらの業種では、商品の売買やサービスの提供と、実際の代金のやり取り(入金・出金)に時間的なズレが生じることが一般的です。5伝票制では、「売上伝票」と「仕入伝票」を別に設けることで、現金の動きとは別に、売上や仕入といった経営上の成果を明確に管理することができます。

なぜ5伝票制を使うのか
経営状況の可視化: 売上と入金、仕入と出金を分けて管理できるため、企業の営業成績とキャッ
 シュフローを別々に把握しやすくなります。
効率的な記帳: 掛け取引を頻繁に行う企業にとっては、全ての取引を振替伝票にまとめて記入す
 るよりも、売上伝票・仕入伝票を使い分ける方が、記帳作業を効率化できます。

6) 5伝票制の役割の変化

 近年は会計ソフトの普及により、紙の伝票に頼る「伝票会計」自体が減少しています。多くの企業は、会計ソフト上で取引内容を入力することで、自動的に仕訳が作成される仕組みを利用しています。
5伝票制は、紙の伝票を使って取引を記録する伝統的な経理方式であり、会計ソフトの普及は、この伝票を使った手作業の多くを自動化し、経理業務を大きく変えました。

会計ソフト

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