伝票の保存方法と法定保存期間をわかりやすくまとめたガイドのイメージ画像
伝票の保存期間や劣化を防ぐコツを印刷会社が解説します。

複写伝票って、どのくらいの期間保管しておけばいいんだろう?

経理処理や帳簿整理をしていると、ふとそんな疑問が浮かぶことがあります。

「とりあえず全部保管しておけばいい」と思っていても、
保管スペースには限りがありますし、
「もう処分しても大丈夫かな」と迷う場面も多いですよね。

でも、いざ捨てようとすると
「保存期間って決まりがあるのか…?」
と不安になる……。

実は、複写伝票には
法律上の保存期間”と”紙そのものの寿命”
という2つの視点があります。

法律の面でどれくらいの期間取っておく必要があるのか。
そして、紙という素材がどのくらい持つのか。

この2つを抑えておく必要があります。
どちらか一方だけでは、正しい保存方法を判断することはできません。

この記事では、印刷会社の立場から、

  • 伝票をどのくらい保存すべきか(法的視点)
  • 長期保存で注意すべきポイント(紙的視点)

を分かりやすく整理してお伝えします。

複写伝票の保存期間は?劣化を防ぐコツを印刷会社が解説

1.複写伝票の保存期間はどのくらい?法的な視点から整理しよう

法律で定められた伝票の保存期間を示す図。会計・経理関係7年、消費税関係7年、労務関係3年を一覧でまとめたイラスト。
会計・経理関係と消費税関係の伝票は7年、労務関係は3年が保存の目安です。

■ まずは押さえたい「法律で決められた保存期間」

「伝票ってどれくらい残せばいいの?」という疑問には、
実は『法令で定められた保存期間』が存在します。

代表的なものを表で整理すると以下の通りです。

▼主な伝票関連の法定保存期間一覧▼

区分主な書類根拠法令保存期間
会計・経理関係請求書、領収書、納品書など会社法/法人税法7年
(欠損金繰り越し控除の場合は10年)
消費税関係請求書・仕入明細など消費税法7年
労務関係給与台帳、出勤簿など労働基準法3年

業種や形態によって異なる場合もあります。

個人事業主の場合は「所得税法」、法人の場合は「法人税法」が基準になります。
そのため、”自分の立場にあった保存期間”を確認することが大切です。

たとえば青色申告の個人事業主なら、
帳簿や伝票は原則7年、見積り書や注文書などは5年。

>まとめると
・”法的な保存期間は「7年」が基本ライン”
・”ただし業種・業務形態で前後する場合がある”

 

■ 紙で残す?電子で残す?それぞれのメリットと注意点

2022年から続く電子帳保存方法改正により、
請求書や領収書を電子データで保存する方法も選べるようになりました。

ただし、電子保存には「タイムスタンプ」や「検索機能」など、
システム要件を満たす必要があります。

『一方で、紙保存には”すぐに参照できる安心感”と”法的に明確な扱いやすさ”があります。
特に複写伝票は、現場で控えを即時発行できる利便性があり、まだ多くの企業で採用されています。

印刷会社の現場から見ると…
電子化が進んでも、「紙+電子」のハイブリッド運用が現実的です。
伝票印刷を完全にやめるより、「必要分だけ紙で残す」のが最もリスクが少ないです。

 

2.紙の特性から見る複写伝票の”保存できる・できない”

光、熱、圧力の3つの原因によって伝票が劣化する様子を示したイラスト
紙伝票の劣化原因は光・熱・圧力など。特にノーカーボン紙は湿度に弱いため注意が必要です

法律的に「何年残すべきか」は決まっていても、
実際には「紙そのものがどれだけもつか」が問題になることもあります。

「気づいたら文字が薄くなっていた」「一部だけ黒ずんで読めない」——。
そんな経験、ありませんか?

複写伝票の印字は“書いた瞬間から少しずつ変化が始まる”と言われています。

ここでは、紙がなぜ変色・退色してしまうのかを簡単に整理しておきましょう
次の章では、それを踏まえて「どうすれば長く残せるか」を紹介します。

要約すると、「光・熱・圧力」が原因となります。

 

1)紫外線で分子構造が崩壊する

複写伝票に使われている「感圧紙」や「感熱紙」は、
書いたときの“圧力”や“熱”で色がつく仕組みになっています。

その色を作っているのが「ロイコ染料」という薬剤。
ただしこの薬剤、光や熱にとても敏感で、
紫外線を浴び続けると発色が壊れ、だんだんと色が薄くなってしまうんです。

つまり、窓際や照明の真下に置いておくと、
「書いたときはくっきり→半年後にぼんやり」という状態になるわけです。 

 

2) 熱・温度で薬剤層が”再反応”する

感圧紙の発色層は、温度や湿度にとても左右されます。
暑い場所に置くと薬剤が“再び反応”してしまい、印字がにじんだり、紙が黄ばんだりすることがあります。

夏場の倉庫やコピー機の近くなどは要注意。
知らないうちに、紙の中で化学反応がゆっくり進んでしまっているケースもあります。

 

3)圧力やこすれが紙の構造を壊す

複写伝票は「圧力で発色する紙」なので、
上から重ね置きしたり、ぎゅっと束ねすぎたりすると、印字していない部分まで発色してしまうことがあります。

一見きれいに保管していても、
その“重み”が少しずつ紙を傷めているんですね。

■「紙の特性から見る複写伝票の”保存できる・できない”」のまとめ

ここまで見てきたように、複写伝票の劣化は光・熱・圧力という”日常に潜む3つの刺激”によって静かに進んでいきます。
どれも特別な環境ではなく、「普通に使っているだけ」でも起こるというのが厄介なところです。

「どうして色が薄くなったんだろう…?」
そんなトラブルの裏には、こうした紙の特性が関係しているんですね。

でも、逆に言えば仕組みを知れば防げるということです。

次の章では、”今日からできる保管・取り扱いのコツ”を具体的に紹介します。

 

3.長持ちさせるには?印刷会社が教える保管のコツ

伝票をファイルボックスやクリアケースに整理したり、直射日光酒、風通しによる対策で長期保管する様子のイラスト
直射日光を避け、湿気・温度変化を防ぎ、クリアファイルや専用ボックスで整理するのが長持ちのコツです

ここからは、印刷会社の立場から
「複写伝票をできるだけ長くきれいに保つためのコツ」を紹介します。

どれも特別な設備が必要なものではなく、
日常業務の中で”ちょっと意識するだけ“で効果が出る方法ばかりです。

 

1)光から守る――日光と蛍光灯に注意!

複写伝票の印字に使われる「発色薬剤」は、
紫外線や強い蛍光灯の光にさらされると化学反応を起こし、徐々に退色してしまいます。

特に窓際や照明の真下などに放置すると、
半年ほどで印字が薄くなることも。

対策ポイント
・保管は暗所・直射日光を避けた場所に。
・棚や引き出しの内側など、なるべく光が当たらないスペースを選ぶ。
・上に透明なクリアファイルを重ねると逆効果。光を通すので注意。

 

2)湿気より怖い”温度差”――環境を一定に保つ!

湿気はもちろん敵ですが、実はもっと厄介なのが温度差です。
複写伝票の紙面には微量の化学薬剤が含まれており、
湿度が高い→発色が進む、低い→反応が鈍る、を繰り返すことで
じわじわと印字がぼやけることがあります。

■ 対策ポイント
・エアコンや暖房の吹き出し口付近に置かない。
・ダンボール保管なら、床から少し浮かせて「空気の通り道」を作る。
・使わない期間が長い場合は、気温変化の少ない倉庫や棚の奥が◎。

 

3)重ねすぎ・詰め込みすぎに注意!

複写伝票は圧力でも発色してしまう性質があります。
つまり、上から重い書類を積んだり、ぎゅうぎゅうに束ねて保管してしまうと、
擦れ跡や文字の転写が起こりやすくなります。

対策ポイント
・伝票をファイルボックスなどに立てて保管する。
・ゴムで強く束ねるのは避ける。ゆるめにまとめるか、紙バンドで軽く留める
・保管枚数が多い場合は、年度ごと・担当者ごとに小分けするのがオススメ。

 

4)よくある質問

Q1年経った伝票はすぐ捨てても大丈夫ですか?

A. 原則として、法人税法・商法などで定められている**保存期間(7年または10年)**を過ぎれば廃棄は可能です。ただし、税務調査やトラブル対応の観点から、決算年度をまたいで1〜2年程度余裕をもって保管しておく企業も少なくありません。特に取引先との契約や継続取引に関わる書類は、保存期間を過ぎても一定期間残しておくと安心です。

Q2. 電子化(スキャン保存)した場合、紙の原本は破棄してもいいですか?

A. 条件を満たせば、電子帳簿保存法に基づいてスキャンデータのみで原本を破棄することが認められています。ただし、「解像度・階調・日付・改ざん防止」などの要件を満たしていないと紙の廃棄は違法扱いになる可能性があります。電子化を行う場合は、社内の運用ルールを明確にし、証跡を残すことが重要です。

Q3. 感熱紙の伝票はどれくらいの期間保存できますか?

A. 感熱紙は数年で文字が薄れる・消える可能性があるため、長期保管には不向きです。最低でも直射日光・高温多湿を避けた環境で保管し、重要な書類はコピーを取って普通紙に残す、またはスキャンでデータ保存する方法が推奨されます。現場でも「5年を超える保存はリスクが高い」と考えるのが一般的です。

Q4. 税務調査で過去の伝票を求められた場合、どこまで遡られますか?

A. 通常は過去7年以内の伝票が対象になりますが、脱税や申告漏れの疑いがある場合は10年分を求められるケースもあります。そのため、重要な取引に関する書類は法定期間を過ぎても10年間の保管を意識しておくと安全です。

Q5. 破棄する際に注意すべき点はありますか?

A. 伝票は取引先名や金額など機密情報が含まれる文書です。廃棄の際は、シュレッダーや専門業者による溶解処理など、情報漏えい対策を行ってください。特に顧客情報を含む伝票は、個人情報保護法の観点からも適切な処理が求められます。

5)まとめ|印刷伝票は”正しく保存”で長持ちさせられる

■今すぐできる3つの見直し

チェック項目今日できる改善
光対策保管棚を壁際・暗所に移動
湿気対策ダンボールの下にすのこを設置
圧力対策伝票を立てて保管・束ねすぎない

この記事で紹介した内容を少し意識するだけで、
複写伝票の印字や紙の寿命を1.5~2倍に伸ばすことが可能です。

複写伝票の保存方法を見直すことは、
「再印刷の手間を減らす」だけでなく、社内の記録制度を守ることにも繋がります。

もし電子化を考えているなら、まずは現行の紙伝票を見直すのがおすすめです。
▶ [紙伝票と電子伝票の違いを詳しく見る]