伝票印刷の教科書|種類・発注・設計・電子化まで印刷会社が徹底解説

「伝票」と聞くと、なんとなく「書類のひとつ」と思われがちです。
けれど、実際の現場では、納品・請求・お会計・お客様対応。
そのすべての”動き”を支えているのが、ここ小さな紙です。
たった一枚の伝票の設計で、記入ミスが減り、作業時間が短くなり、会計処理まで変わることもあります。
本記事では、「伝票とは何か」から「自社に合った設計・発注方法」までを、印刷会社の視点で整理しました。
「伝票を見直したい」「今のままでいいのか不安」――。
そんな方が読めば、今日から使える判断軸が必ず見つかります。
まずは整理:伝票とは?どんな種類がある?

「伝票」と言っても様々な種類や紙や使い方があります。
この章では、伝票について一つ一つ解きほぐし、情報を整理していきます。
1.伝票とは?会計用語との関係をざっくり整理
「伝票」という言葉は、よく聞くのに意外と意味があいまいです。
経理や会計で使う「伝票」と現場で使う「伝票」は、じつは全く別のものを指しています。
会計、現場、そして印刷会社。
それぞれの立場で”伝票を見る角度”が違うことを理解しておくと、
「使いやすさ」の意味がより具体的に見えます。
✓ 会計でいう「伝票」|取引内容を帳簿にまとめるための記録用紙
会計の世界でいう「伝票」は、取引内容を整理して帳簿にまとめるための記録用紙です。
たとえば、領収書や請求書を見ながら「いつ・誰と・いくら・どんな取引をしたか」を書き込み、それを元に帳簿(仕訳帳)へ転記していきます。
代表的な伝票には、以下のような種類があります。
- ・振替伝票(現金の出入りがない取引の記録)
- ・出金伝票(現金を支払ったときの記録)
- ・仕訳伝票・売上伝票(物やサービスの取引を記録)
これらはすべて、仕訳のもとになる書類=帳簿づくりの出発点です。
後から内容を確認できる『正式な記録(証憑)』にもなるため、
伝票は『会社の取引を正確に残すための一次記録(原票)』という位置づけになります。
✓ 現場でいう「伝票」|取引や作業の”動き”を記録する紙の道具
会計でいう伝票が「帳簿にまとめるための記録用紙」なら、
現場でいう伝票は、実際の取引や作業の”動き”を残すための記録用紙です。
お客様への納品、材料の受け取り、支払いの確認など、
日々の業務の中で「何が・誰に・どのように行われたか」を紙に残す役割を持っています。
この現場の伝票は、
後の会計処理をするための準備書類であると同時に、
『現場の作業ややり取りをスムーズにする業務ツール』でもあります。
たとえば、下記のような種類がそれにあたります。
- ・納品伝票:納品内容の確認と控え
- ・注文伝票:飲食店・小売などでの受付控え
- ・修理伝票:作業内容や部品交換の記録
- ・領収伝票:受け取った金額と用途の控え
どれも”証拠”ではなく、”現場を動かすための設計物“です。
そのため、印刷の仕様やレイアウトは”業種・業務フロー”ごとに最適化される必要があります。
✓印刷会社が考える「伝票」|”使いやすさ”を形にする設計の仕事
印刷会社にとっての「伝票」は、単なる印刷物ではありません。
それは、現場で使う人の動きを設計する仕事そのものです。
現場で求められるのは「書きやすく」「ミスが少なく」「後から見返しやすい」こと。
そのために、私たちは伝票一枚の中に次のような工夫を設計しています。
- ・ミシン目の位置:切り離しやすさと、控えを残すバランスを調整
- ・ナンバリング:抜けや重複を防ぎ、管理のしやすさを高める
- ・材質と厚み:筆圧や複写枚数、使用環境(温度・湿度)を考慮して選定
- ・レイアウト:記入者の視線や手の動きを前提に、欄の順序と間隔を設計
- ・テンプレート設計:業種別の基本フォーマットを用意し、お客様自身が運用に合わせてカスタマイズできるように準備
こうした細部の積み重ねが、
「書きやすい」「整理しやすい」「残しやすい」伝票を作ります。
印刷会社の仕事は、ただ紙を刷ることではなく、
“現場”で使いやすい紙を一緒に設計することになります。
▶[伝票設計における加工一覧](作成予定)
2.伝票と周辺書類(納品書・請求書・領収書など)の違い
ここまでで「伝票とは?」という言葉の意味を整理しました。
次に、実際の業務の中でどんな種類の伝票が使われているのかを見てみましょう。
伝票と一口に言っても、その役割や記入内容は業務の流れによって異なります。
会計で扱う「仕訳伝票」等の記録目的とは違い、現場で使う伝票は”作業の動き”を残すための紙です。
▼ 主な伝票の種類と使われ方 ▼
| 種類 | 主な用途 | 現場でのタイミング |
|---|---|---|
| 納品書 | 商品やサービスを収めた記録 | 納品時(お客様確認) |
| 請求書 | 代金を請求するための明細書 | 納品後~締日 |
| 領収書 | 代金を受け取った証明書 | 支払い完了時 |
| 見積書 | 金額・条件を提示する書類 | 受注前の提案時 |
| 注文書・発注書 | 発注・受注のやり取りを記録 | 商談成立時 |
| 出金伝票/入金伝票 | 現金の動きを管理 | 会計処理の直前段階 |
これらはそれぞれ単独で完結するものではなく、
「見積 → 注文 → 納品 → 請求 → 領収」というように一連の流れの中で使われています。
業種や会社の規模によっては
「納品+請求」を一枚にまとめたり、
「領収+納品」を一体型にして使うケースもあります。
このように、伝票は取引の段階や目的によって役割が変わるため、
どの場面で・誰が・何のために使うのかを意識して設計することが大切です。
▶[納品書・請求書・領収書の違いと使い分け方](作成予定)
▶[業務フロー別でみる伝票の使い方](作成予定)
3.紙の種類で変わる:単式・複写・感熱の構造と使い分け
伝票というと、つい「納品書や請求書」といった内容の違いばかりに目が行きがちですが、
実は「どんな紙で作るか」という”構造の違い“も大きなポイントです。
▼ 主な紙の種類と使われ方 ▼
| 種類 | 特徴 | 印字方法 | 保存性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 単式伝票 | 1枚で完結するシンプルな形式。コストが安く手軽に使える。 | 手書き/プリンター印刷 | ◎(長期保存に強い) | 社内メモ、簡易的な注文書など |
| 複写伝票 | 筆圧で同時に複数枚へ記入でき、控えを残せる定番タイプ。 | 手書き | ○(経年でやや薄くなる) | 納品書、請求書、作業報告書など |
| 感熱伝票 | 専用プリンターで熱印字。スピーディでインク不要。 | 感熱プリンター印字 | △(高温・光に弱い) | レシート、宅配伝票、POSレジなど |
どのタイプにも一長一短があり、
「発行頻度」「保存期間」「印字方法」によって向き不向きが変わります。
たとえば、短期的なイベントや社内メモには単式、
お客様とのやり取りや記録保存が必要なら複写、
日常的に大量発行する場合は感熱が向いています。
伝票は紙の構造や印字方式によって使い勝手や保存性が変わるため、
どんな環境で・どのくらいの頻度で使うのかを考えて選ぶことも大事になってきます。
▶ 伝票の種類と違いが一目でわかる|単式・複写・感熱など紙タイプ別にやさしく解説
▶ 複写伝票の保存期間は?劣化を防ぐコツを印刷会社が解説
4.ここまでの整理:伝票の“意味”と“つくり”を理解したら
ここまでで見えてきたのは、伝票が単なる記録用紙ではなく、
『情報を伝え、仕事を動かすための設計物』だということです。
・会計の伝票は”取引を記録する“
・現場の伝票は”動きを整理する“
・そして印刷会社が作る伝票はそれらを”使いやすくつなぐ紙の仕組み“
この構造と役割を理解しておくと、
「どんな場面で、だれが、何のために使うのか」を基準に、
自社に合った伝票を設計できるようになります。
次の章では、市販品と印刷発注の違いを具体的に見ていきましょう。
自社に合う伝票を選ぶ:市販品と印刷発注の比較

伝票を「市販品で買うか」「印刷会社に発注するか」
この章では、その違いと判断のポイントを分かりやすく整理します。
どちらが良いかは、価格やスピードだけでなく「使い方」「目的」「業種」によって変わります。
ここでは、代表的な比較軸を見ながら”自社に合った伝票の選び方”を考えていきましょう。

1.タイプの違いをざっくり把握する(市販品/印刷発注)
市販品と印刷会社発注の最大の違いは、「自由度」と「長期コスト」にあります。
まずは感覚的にイメージを掴むため、シンプルな比較表を見てみましょう。
| 項目 | 市販品 | 印刷会社発注 |
|---|---|---|
| コスト | 少量なら安価 | 数量が増えるほど単価が下がる |
| 入手スピード | 即日購入可 | 納期あり(数日~) |
| カスタマイズ | 固定仕様 | レイアウトや紙質など自由 |
| ブランド製 | 汎用 | オリジナル感・信頼性アップ |
▼ポイント
・すぐに使えるのが市販
・自分に合わせられるのが発注
まずはこの違いを理解しておくと、判断の軸がぶれにくくなります。
2.コスト・自由度・スピードで考える
次に、判断のポイントを3つの軸で見ていきましょう。
| 判断軸 | 市販品 | 印刷会社発注 | 判断の決め手 |
|---|---|---|---|
| コスト | 少量・短期なら有利 | 長期・大量なら有利 | 使用量が多ければ発注が有利 |
| 自由度 | レイアウト固定 | 項目・色・紙質が自由 | ブランドや効率重視なら発注 |
| スピード | 即購入可 | 納期有 | 時間に余裕があれば発注も検討 |
▼ポイント
「安い」だけで決めず、『効率・見た目・継続性』も含めて判断するのがポイントです。
3.業種・用途で見るオススメ構成
業種ごとに「どちらが合うか」は異なります。
ここでは代表的な3業種を例に、使いやすい構成を紹介します。
| 業種 | オススメタイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 二枚複写 or 単式+控えあり | 会計・厨房控えの両立に便利 |
| 小売・物販 | 三枚複写 | 発注・顧客・控えを分けて管理できる |
| サービス業 | オリジナル設計 | 受付~請求~領収まで一体化可能 |
▼ポイント
「どんな場面で」「誰が使うか」で選ぶと、自然に”最適な形”が見えてきます。
4.最適な伝票を見極めるチェックリスト
以下の質問に「はい」が多ければ、印刷会社発注向き。
「いいえ」が多ければ、市販品でも十分です。
- 会社名やロゴを入れたい
- 毎月100冊以上使う
- 記入ミスを減らしたい
- 保管・会計処理を効率化したい
- 複写や紙色などを指定したい
▼結果の目安
・「はい」が3つ以上 → 印刷会社発注がおすすめ
・「いいえ」が多い → 市販品で十分対応可能
“どちらが良いか”より、”どちらが自社に合うか”を考えるのが正解です。
▶ 伝票は買う?作る? コスト・業務・印象から考える“最適な選び方”
■ 発注前に知っておきたい:仕様と準備の基本

この章では、「どう頼めばいい?」という疑問を解消し、発注前に整理しておきたいポイントをまとめています。
「伝票の発注って難しそう…」という不安をなくし、
スムーズに準備を進めるための”行動の地図”をお届けします。
1.伝票発注の全体像を把握する

印刷会社に伝票を発注する流れは、実はとてもシンプルです。
まずは全体の工程を知ることで、どこで何を準備すればいいかが明確になります。
①仕様整理
どんな用途で使うのか、何枚複写か、どのサイズに適しているかを整理します。
→ここが曖昧だと、のちの工程で仕様変更や再見積もりが発生しやすくなります。
②見積依頼
仕様が固まったら、印刷会社に見積を依頼します。
数量・紙種・加工方法・納期など、条件を明確に伝えるのがポイントです。
③データ入稿・校正確認
データを送付し、試し刷りやPDF校正を確認します。
修正点があればここで調整。印刷開始前の最終チェックです。
④納品・検品
仕上がった伝票を受け取り、枚数・印字ズレ・複写具合などを確認します。
こうして流れを把握すると、「何から始めればいいか」が自然と見えてきます。
最初の一歩は。”仕様を言語化すること”です。
2.用途別に“正しい伝票”を選ぶ:仕様を逆算する考え方
どんな伝票を発注すれば自社に合うかを整理しておきましょう。
「市販 or 発注」の判断とは異なり、
ここでは”発注を決めた後、どうやって最適な仕様に落とし込むか“がテーマです。
▼ 仕様を決めるための3つの軸▼
1) 使う場面(現場・用途)
例:納品時/サービス提供時/会計処理時など。
→ 記入頻度や持ち運びの有無で、紙厚や複写数が変わります。
2)使う人・渡す人(誰が書いて、誰が受け取るか)
例:スタッフ→お客様、現場→経理など。
→ 複写枚数・通し番号・押印欄などが変わる判断ポイントになります。
3)処理フロー(使った後の扱い)
→ 保管・スキャン・会計処理の流れに応じて、感熱紙/ノーカーボン紙などを選定。
| 用途 | 推奨構成 | 備考 |
|---|---|---|
| 納品・請求 | 3枚複写(控・客・経理) | 通し番号推奨 |
| サービス・修理 | 2枚複写(客・控) | ペン圧重視 |
| 店頭販売・予約 | 単式/感熱 | スピード重視 |
このように「使う現場」→「仕様」→「設計」の順に逆算していくと、
後の工程での“使いやすい伝票設計”につながります。
また、ここで整理を済ませておくことで、印刷会社とのやり取りもスムーズになります。
3.印刷会社が見てきた“間違えやすい仕様”とその対策
印刷会社の現場では、
「お客様の希望通りに作ったのに、実際に使ったら違った」といったケースが少なくありません。
ここでは、そうしたよくある仕様ミスと、現場での具体的な対策を紹介します。
例1:複写の枚数が多すぎた
「3枚あれば安心かなと思っていたけど、実際は2枚で十分だった」
複写の構成は、
・控え
・渡す相手
・経理控え
の3点で整理すると無駄が出にくいです。
例えば、店舗業務なら「1枚目=お客様控、2枚目=店控」で十分なことが多く、
経理処理は後日のスキャンで代替可能だったりします。
発注前に「どの控えを誰に渡すか」を紙の流れで書きだすと、複写数の判断が確実になります。
印刷会社では、この紙の流れを言ってもらえれば、最適な構成を一緒に設計できます。
例2:テンプレートを使ったが、必要な情報が足りなかった
「無料テンプレートを使ってみたけれど、自社の情報が入りきらなかった」
これはよくある失敗例です。
テンプレートは便利ですが、
業種ごとの必須項目(担当・押印欄・管理番号など)が抜けている場合があります。
▼ 対策ポイント ▼
- ・無料テンプレートをそのまま使わず、『編集できるデータ形式(Excel/illustratorなど)』を選ぶ。
- ・自社で修正が難しい場合は、必要な情報リストだけ印刷会社に渡すと、デザイナーが体裁を整えてくれるところも。
- 「印刷会社に任せる=自由度がなくなる」ではなく、むしろ使いやすさと制度対応を両立できる最短ルートになる。
テンプレートの修正だけを受ける会社もあれば、
1からのデータ作成やデザイン調整までサポートする会社もあります。
「どこまで任せたいか」を基準に、自分の目的に合った印刷会社を選ぶことが大切です。
データ作成で不安がある方は、今後公開予定の「印刷前チェックリスト」も参考にしてみてください。
印刷会社によっては、テンプレート修正やデータ入稿のご相談も承っています。
仕様が固まっていなくても、まずはご相談からでも大丈夫です。
例3:紙質や厚さが思ったのと違っていた
「どの紙も同じだと思っていたけど、届いて見たら思ったよりペラペラだった…」
思っていた厚みや手触りと違って驚く、そんな声は少なくありません。
紙は種類や厚さによって、書き心地や複写の発色、保管時の扱いやすさまで変わります。
だからこそ、サンプルを取り寄せて実際に触れてみるのが一番確実です。
手触りや筆記具との相性を確かめておくと、納品後の「思ってたのと違う」を防げます。
サンプルに関しても、当社はご用意しています。
まずはお気軽に請求してみてはいかがでしょうか。
■ 設計で変わる:使いやすい伝票の作り方

この章では、伝票を「より使いやすいもの」にするための設計の考え方をまとめています。
同じ内容を印刷しても、
枠の配置・紙の厚み・綴じ方が違うだけで使い勝手は大きく変わります。
印刷会社が実際に現場で設計を考えるとき、どんな視点で”使いやすさ”を作っているのかを見ていきましょう。
1.使いやすさを生み出す設計の考え方
伝票を作るとき、多くの方がまず考えるのは
「項目をどう並べるか」「紙は何枚か」といった仕様面です。
けれど、本当に重要なのは、その伝票を”どう使うか”という現場の動きです。
たとえば「書く順番」「渡す流れ」「後で見返す方法」。
これらを先に整理しておくだけで、記入ミスや探す手間が劇的に減ります。
印刷会社の設計では、見た目を整える前に「導線」を考えます。
人の手がどの順で動くか、視線がどの位置をたどるか、どこで迷いやすいか。
それを”設計”として可視化することで、使いやすい紙が生まれます。
伝票づくりの基本は「見た目のデザイン」ではなく、
『動きをスムーズにする構造設計』なのです。
2.デザイン面の設計:視線と記入導線を整える

同じ伝票でも、「どこに何を配置するか」で使いやすさは驚くほど変わります。
人の視線は左上から右下に流れるため、
その順序に沿って情報を並べると自然に下記進めやすくなります。
たとえば、
- ・左上に「日付」→その下に「取引先」→中央に「内容」→右下に「金額」…という流れにしておくと、記入がスムーズで、自然な確認に
- ・一番下に「担当者」や「押印欄」を置くと、”締め作業の合図”になって抜け漏れの防止
逆に、視線の流れに逆らう設計は、たったそれだけで驚くほど使いづらくなります。
書類の「右上にある日付欄」の記入忘れ――一度は経験ありませんか。
これは視線の流れに反する場所に記入欄があるために起こりやすいことです。
他にも「金額欄が左側にある」パターンの伝票。
金額は最後に書く項目のはずが、流れの途中で登場するため、自然なリズムが崩れて書き間違いが起こりやすくなります。
こうした細かい配置の違いは、
一見当然のようでいて、使いやすさを決定づける大きな要素です。
たったこれだけのことで、書きやすい紙が使いにくい紙に代わってしまう。
だからこそ印刷会社は、見た目ではなく「人の視線と手の動きを前提にした設計」を重視します。
欄の配置は単なるデザインではなく、現場の作業効率そのものを支える設計の仕事なのです。
▶ 伝票設計|デザイン面からみる使いやすい伝票(作成予定)
3.加工面の設計:綴じ方・ミシン目・紙厚で変わる操作感
見た目が整っていても、ちぎりにくい・厚みが合わない・裏写りするといった物理的なストレスがあると、現場での作業効率は大きく下がります。
伝票は「使う人の手の感覚」に最も近い印刷物。
構造の設計が品質の半分を決めるといっても過言ではありません。
代表的な要素は次の3つです。
| 要素 | 適した選択 | 効果 |
|---|---|---|
| ミシン目の深さ | 手渡し頻度が高い → 浅め 控え保存重視 → 深め | 切りやすさと控え残しのバランス調整 |
| 綴じ方 | 上綴じ→カウンター対応向け 左綴じ→ファイル保管向け | 現場導線に合わせた操作感 |
| 紙の厚み | 筆圧が強い→厚め 複写が多い→薄め | 書き心地と発色バランス |
例えば、飲食店のオーダー伝票は「浅いミシン目+上綴じ」が最も多く、
現場で片手でちぎれることが作業スピードの決め手になります。
一方、請求書や納品書は「深めのミシン目+左綴じ」で、
ファイル保管やナンバー管理との相性を重視しています。
このように「どの場面で、どう扱うか」を基準に加工を設計すると、
作業効率と保存性の両方を満たす伝票になります。
状況に合わせた加工の詳細については、関連記事にて紹介予定です。
▶ 伝票設計|加工面からみる使いやすい伝票設計(作成予定)
4.紙×電子を見据えた設計
紙の伝票はこれからも使われ続けますが、電子保存やスキャン運用との併用も増えています。
そのため、紙の段階から電子化を意識した設計が重要になっています。
たとえば、
- ・スキャンしやすいように余白を多めにとる
- ・ナンバー位置を統一してOCR読み取りをしやすくする
- ・感熱紙ではなく保存性の高いノーカーボン紙を選ぶ
といった工夫で、紙→電子の意向をスムーズにできます。
紙だからこそできる『使いやすさ』と、電子対応の『長期保存性』を両立させるのが、これからの設計の基本となっていきます。
▶ 紙と電子を使い分ける現実解|補助金を活かしてコスト削減を実現するハイブリッド運用
また、電子化との付き合い方を考える上では、
「紙で残した場合に、電子帳簿保存法のもとで本当に”証拠として通用するか”」
を抑えておくことも大切です。
紙保存の落とし穴と対策は、
▶紙のままで”証拠”になると思っていませんか?電子帳簿保存法が突きつける意外な落とし穴」で詳しく解説しています。
■ よくある質問
単式(1枚)、複写(2~3枚)、感熱式の3系統が主流です。業務内容に応じて使い分けます。
少量・短期なら市販品、長期運用や効率重視なら発注が有利。自由度・コスト・スピードのバランスで判断が必要。
問題ありません。手書きラフや現物を元に印刷用データを作成できます。
記入欄の順序やミシン目位置など、小さな設計変更で使いやすさ・保管性・処理速度が大きく向上します。
一概には言えません。完全電子化は向かない業種も多く、紙と電子の”併用”が現実的な選択です。
紙種・色数・複写枚数で変動します。おおよそ数千円~数万円規模が一般的です。
■ まとめ:印刷する前に、“考えるべきこと”を整理しよう
ここまでで、伝票印刷を進めるための基本が一通り整理できました。
伝票を印刷するときに大切なのは、
単に「形をまねて作る」ことではなく、自社の使い方に合わせて設計することです。
- ・種類と構成を理解することで、自社に必要なタイプを判断できる
- ・市販品との違いを知れば、「発注するべき理由」が明確になる
- ・発注前の準備をしておくと、やり取りがスムーズでミスを防げる
- ・設計や加工を工夫すれば、日々の記入・保管・会計処理がぐっと楽になる
- ・電子化やハイブリッド運用を意識すると、これからの業務にも対応しやすい
ここまでの流れを抑えておけば、
『どんな伝票を、どう印刷すればいいか』が自然と見えてきます。
あとは、それを自社の現場に合わせて形にするだけです。
まずは、今の伝票を見直すことから始めてみてください
仕様や使い勝手の改善は、思っているより小さな一歩から変えられます。