伝票の圧倒的コストダウン?印刷会社が“数値”で解説するコスト設計のポイント

「伝票を印刷会社に発注しようとしたが、思ったよりも高い…。」
そう感じたことはありませんか?
伝票の価格は「紙の種類」や「複写枚数」だけで決まるわけではありません。
“設計の仕方”を少し変えるだけで、同じ仕様でも半分近くコストを抑えられることがあります。
この記事では、
数量・仕様・納期・入稿方法――この4つの視点で、
印刷会社の現場から「コストが変わるポイント」を整理します。
▶ どこを見直せば安くなるのか?
▶ 逆に削ってはいけない部分はどこか?
そんな疑問を解決しながら、”使いやすくて安い”伝票設計のコツを紹介します。
まずは整理|伝票印刷の価格を決める4つの要素

伝票の価格は、見た目や紙の種類だけで決まるわけではありません。
実際のコストを左右するのは主に4要素で決まります。
【価格を決める4つの要素】
・数量…どれくらい刷るか
・仕様…どんな加工、構成をするのか
・納期設定…どのくらいの納期を指定するのか
・入稿方法…印刷するデータを何で入稿するか
この4つのバランスを整えるだけで、同じ内容の伝票でも価格が数十%変わることがあります。
まずは、それぞれの要素がどんな影響を持つのかをカンタンに整理してみましょう。
伝票を安くするには、まず“どこがコストを作っているか”を知ることが大切です。
数量(ロット)が伝票コストに与える影響
印刷の世界では、「まとめて作るほど安くなる」が基本です。
一冊単位では大差がなくても、100冊単位・500冊単位とロットを増やすと、一冊当たりの単価は大きく下がります。
印刷機のセットアップ(版の作成やインク調整など)は最初の一回だけでも一定のコストがかかるため、少部数ではその初期費用の割合が大きくなりがちです。
逆に、多部数で印刷すれば、この初期費用が分散され、単価が安定します。
【ポイント】
・必要冊数が明確なら、年単位で使う分をまとめて発注するのがもっとも効果的。
・消耗ペースが不明な場合は、半年~1年分の想定から検討してみましょう。
仕様(複写・紙質・加工)が伝票コストに与える影響
次に大きな影響を与えるのが仕様です。
たとえば同じ伝票でも、以下のような違いで価格は変わります。
| 項目 | コストへの影響 | 補足説明 |
|---|---|---|
| 複写枚数 | 枚数が増えるほど高くなる | 2枚複写より3枚複写の方が用紙・加工ともに増加 |
| 紙質 | 上質紙<ノーカーボン紙 | 複写タイプは専用紙を使用するためコストアップ |
| 加工 | のり製本・ナンバリングなどで加算 | 加工内容によっては印刷機を変える必要あり |
このように、「書きやすさ」や「使いやすさ」を求めて仕様を盛りすぎると、気づかぬうちに価格が跳ね上がります。
実際には、不要な加工を省くだけで10~20%削減できるケースも珍しくありません。
【見直しのヒント】
・のり製本化されなくても運用に支障がない?
・ナンバリングは本当に必要?
・用紙厚は実際の筆圧に合っている?
こうした視点で一度仕様を整理すると、無駄のない”現場仕様”が見えてきます。
納期設定が伝票コストに与える影響
印刷通販では、発注時に「通常納期」「短納期(翌日・当日発送)」などを選択できます。
この納期指定が、実は最もシンプルな価格調整ポイントです。
短納期を選ぶほど印刷所のスケジュールに余裕がなくなり、割増料金が発生します。
一方で、通常納期や余裕を持った納期を選べば標準価格での印刷が可能になります。
【コストを抑えるコツ】
・納期は「必要日から逆算」
・2~3日の余裕をもって発注をかけると〇
入稿方法が伝票コストに与える影響
もう一つの見落としがちなコスト要因が、入稿方法です。
印刷会社によって異なりますが、多くの場合は2種類の入稿方法が用意されています。
▼自作のオリジナルデータから入稿(AI,PSD,PDF,JPGなど)
illustratorなどで作成した完全データをそのまま入稿する方法
設計を全て決められるので、求める形式の伝票が作成可能。
ただし、画像編集やoffice系のソフトの知識が必要になる。
▼印刷会社のテンプレートを使って入稿
印刷会社側が用意してあるテンプレートを選択して設計を決める入稿方法。
テンプレートを選び、必要なデータを入力することで設計。
画像編集やオフィス系ソフトのノウハウがなくても可能だが、
デザイン料が含まれているため、少し割高に。
ほかにも、年末や繁忙期のような時期によって価格が変動することもありますが、
基本的にはこの4つの要素が価格を左右する中心です。
数量(ロット)でコストを抑える

では、実際に各要素がどのくらいコストに影響してくるのか、
ここからは具体的に見ていきましょう。
まずは、いちばんわかりやすい数量とコストの関係から見ていきましょう。
【前提条件】
・2025年11月時点の料金表を元に算出
・伝票は一般的によく使われる設計(B6、1冊50組)で計算しています
・価格は会社ごとの印刷方式やロット構成によって異なります
数量によって単価がどう変わる?
では実際の数値を元に変化を見ていきましょう。
下記は複数の印刷会社の料金表を元に算出した概算価格です。
| 部数 | 目安金額(税込) | 1冊あたりの単価 |
|---|---|---|
| 1冊 ※印刷会社によっては非対応 | 約6,493円 | 約6,493円 |
| 10冊 | 約12,070円 | 約1,207円 |
| 30冊 | 約17,635円 | 約588円 |
| 50冊 | 約22,638円 | 約453円 |
| 70冊 | 約27,735円 | 約396円 |
| 90冊 | 約32,708円 | 約363円 |
| 100冊 | 約34,855円 | 約349円 |
※二枚複写、加工無し、版替えなし、N40、1色、減感加工なし、上質紙70kgで算出
※2025年11月時点
見ての通り、小ロットでは単価が高く、
数量を増やすほど1冊当たりの価格がぐっと下がっていきます。
さらに、同じ仕様の市販品の伝票(税込み360円)とも比較してみましょう。

こちらの例では90冊で市販品と同等の価格。
それ以降は「印刷会社に発注した方が安くなる」ことがはっきりわかります。
実際の発注ロットはどのくらい?
実際、どのくらいの数量で注文が多いのか?
現場の受注傾向を少しだけ紹介します。(※自社の受注状況からの情報になります。)
現場としての受注傾向を元に整理すると、最も多いのは50~100冊程度。
おおよそ半年~1年で使いきれる量を目安に注文されるお客様が中心です。
たとえば、月に10冊使うお店なら、100冊で約10か月分。
「1年で使いきれるくらい+ちょっと予備」という感覚で考えると、
在庫も保管もしやすく、無駄が出にくくなります。
また、極端な例になりますが、
「取引先の印刷会社が廃業した」という理由で、急ぎで1~5冊だけ作ってほしいというケース。
毎年まとめて1,000冊以上の発注で、一年分を一気に確保しておく企業もいます。
こちらは、コストを優先して「多少の在庫は許容する」考え方です。
このように、数量の判断は単に”安さ”だけではなく、
「使う期間」や「保管スペース」などの条件でも変わります。
コストを抑えることも大切ですが、“使い切れる量を見極める”のも同じくらい重要です。
仕様と加工の見直しでコストを抑える

見積現場で特に差が出やすいのが「仕様」と「加工」です。
大きな価格差はありませんが、積み重なれば確実に効いてくるコスト要素です。
ここでは、『一般的な伝票(B6サイズ・1冊50組)』を例に、どの程度価格差が出るのかを見てみましょう。
【前提条件】
・2025年11月時点の料金表を元に算出
・伝票は一般的によく使われる設計(B6、1冊50組)で計算しています
・価格は会社ごとの印刷方式やロット構成によって異なります
複写枚数でどれくらい値段が変わる?
では実際の数値を元に変化を見ていきましょう。
下記は複数の印刷会社の料金表を元に算出した概算価格です。
| 構成 | 概算価格(50冊) | 1冊当たりの目安 | 主な用途例 |
|---|---|---|---|
| 2枚複写 | 約22,000円 | 約440円/冊 | 領収・納品など基本形 |
| 3枚複写 | 約32,000円 | 約640円/冊 | 請求・納品・控えを分けたい業種 |
| 4枚複写 | 約41,000円 | 約820円/冊 | 運送業・宅配・出荷明細など |
※加工無し、版替えなし、N40、1色、減感加工なし、上質紙70kgで算出
※2025年11月時点
見ての通り、複写枚数が1枚増えるごとに、1冊当たり200円ほど上昇します。
「印刷面が増える=紙代+印刷工程が増える」―この単純な構造が、最も大きな価格差を生む要因です。
版替えもコストに影響アリ
また、複写伝票には「版替え」と呼ばれる仕様があります。
これは、1枚目と2枚目で印字内容を変える設定のこと。
例:右上に印字
1枚目→「記入用」
2枚目→「お客様控え」
つまり、「複写伝票の中で印字内容を変える」=「追加の版を作る」という工程が発生するということです。
この「版替え」を行うと、版をもう一度出力する必要があるため、その分のコストが加算されます。
| 構成 | 版替えナシ(50冊) | 版替えアリ(50冊) |
|---|---|---|
| 2枚複写 | 約22,000円 | 約23,700円 |
| 3枚複写 | 約32,000円 | 約33,700円 |
| 4枚複写 | 約41,000円 | 約42,700円 |
版替えは、見た目以上に製版コストがかかるため、
不要な個所まで分けてしまうと全体の価格を押し上げる要因になります。
また同じ版替えでも、1枚だけ印字内容を変える場合と複数枚の印字内容を変える場合でも価格が変わってきます。
細かい版替えまで対応している印刷会社は多くありませんが、要確認です。
ここまでが複写設計にかかわる価格の目安です。
判断ポイント|その複写枚数、本当に必要?
ここまで見てきたように、複写枚数や版替えは確実に価格へ影響する要素です。
ただし、削ればいいという話ではありません。
むしろ大事なのは「どこまでを紙で管理するか」を見極めることです。
例えば、
・現場控えが必要な業種なら3枚複写
・社内管理を電子化しているなら2枚でも十分
・版替えで区別せず、スタンプなどで代用できるケースもある
こうした判断は、業務フローや確認方法によって変わります。
複写枚数は、
「誰が使うか」ではなく「どこで確認するか」を基準に考えると分かりやすくなります。
下記の記事にて、もう少し詳しく具体例を紹介しています。
また、もし一部をデジタル運用に移行している場合は、
「紙と電子を使い分ける」ことにより、実質的に紙にかかるコストも抑えることができます。
▶ 伝票は買う?作る? コスト・業務・印象から考える“最適な選び方”
▶ 紙と電子を使い分ける現実解|補助金を活かしてコスト削減を実現するハイブリッド運用
追加加工でどれくらい値段が変わる?
複写枚数のほかに、
伝票の価格にじわじわ効いてくるのが「追加加工」です。
【代表的な追加加工】
・ミシン目(切り取り線)
・ナンバリング
・穴あけ(ファイル綴じ用)
・刷り色(何色使うか)
・減感加工(感圧させない箇所を作るかどうか)
・のり製本(綴じ形式)
それぞれ、”一冊当たり数十円~”の差が出ることも珍しくありません。
コストが高くなりがちな加工の概算コスト差を見ていきましょう。
| 加工内容 | 概算追加コスト(50冊発注時) | こんな時に使うことが多い |
|---|---|---|
| ナンバリング | +3,500円~9,000円 | 伝票番号で管理したい業種全般 |
| 刷り色(2色) | +3,000円~7,000円 | ロゴや区分色を追加すると印象が上がる |
| 減感加工 | +4,500円~9,000円 | 複写先に個人情報を記載したくない |
※二枚複写、版替えなし、N40、上質紙70kgで算出(2025年11月時点)
印刷会社によって、対応・非対応、価格、加工方法が大きく異なるため、価格帯の幅が非常に大きくなります。
判断ポイント|その加工、本当に必要?
ここで大事なのは、「どうすれば削れるか」よりも、
「この加工が必要かどうか」を一度整理してみることです。
例えば、
【ナンバリング】
・請求書、納品書など「後から番号で追いかけたい伝票」には有効
・ですが、店頭の簡易メモや内部メモには不要なことも多いです
【刷り色】
・伝票に赤色の社印を押印するなど可能
・社内だけで使うチェックリストや、切り離さない書類の場合単色でも問題ありません
【減感加工】
・個人情報等を含めた伝票においては必須級の加工です
一度、現在使っている伝票を眺めてみて、
・このミシン目、本当に毎回ちぎってる?
・このナンバリング、後から参照している場面がどれだけある?
・穴あけは、自分たちでパンチした方が早い場面もある?
など、改めて異なる視点で見直してみると、
「残すべき加工」と「思ったより使っていない加工」が見えてきます。
加工についてもっと詳しく知りたいという方は、以下の記事にて解説する予定です。
▶[伝票設計における加工一覧](作成予定)
納期をゆるく設定してコストを抑える

納期を変えるだけで、伝票の価格は意外と変わります。
たとえば同じ仕様でも、以下のような差が出るケースがあります。
| 納期 | 概算価格(50冊) | 1冊当たりの価格 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 翌日発送 | 50冊可能なデータなし ※小ロット(1~20冊)対応のみ | 約1,625円(20冊で計算) | 対応可能な会社が限られる |
| 4営業日発送 | 約21,000円 | 約420円 | 標準的な納期 |
| 6営業日発送 | 約19,000円 | 約380円 | コストを抑えやすい設定 |
※B6二枚複写、加工なし、上質紙70kgで算出(2025年11月時点)
余裕をもって発注すれば、それだけ価格を抑えやすくなります。
また、納期指定ができるかどうかは印刷会社によって異なります。
スケジュールに余裕がある場合は、納期を長く設定できる会社を選ぶのがおすすめです。
なお、翌日発送や特急対応が可能な会社は限られ、
一度に注文できる冊数も制限されることがあります。
また、繁忙期(年度末や年末)価格が変動する場合もあるため注意が必要です。
そのため、在庫を少し多めに作っておくのもコストを抑える手としては有効になります。
入稿方法を工夫してコストを抑える

印刷を注文するとき、
「どんな形でデータを渡すか」でも価格が変わります。
代表的なものとして、「テンプレート入稿」「データ入稿」の2つの方法が主流です。
| 入稿方法 | 概算価格(50冊) | 特徴・備考 |
|---|---|---|
| テンプレート入稿 | 約22,000円 | デザイン料込みで手軽 レイアウトを選んで必要な情報を入力するだけ |
| データ入稿 | 約21,000円 | デザイン料が不要 印刷データを自作して渡す方式 |
※B6二枚複写、加工なし、上質紙70kgで算出(2025年11月時点)
テンプレート入稿
テンプレートを選んで必要項目を入力するだけで発注できる方式です。
デザイン料が含まれるためやや割高ですが、
レイアウト調整や配置の手間が不要で、初めてでも安心して使えます。
→仕上がりイメージを確認したい人や、社内でデザイン環境がない場合にオススメ。
データ入稿
illustrator、Photoshop、Excelなどで作成したデータをそのまま入稿する方式です。
デザイン料が不要な分、テンプレートより安くなる傾向があります。
ただし、印刷に適した設定(余白・解像度・CMYKなど)が必要になるため、
慣れていないと仕上がりが暗く見える(色設定がRGB)、余白が切れる(サイズの不一致)などのトラブルが起こりやすくなります。
※入稿形式は印刷会社ごとに異なります。
一般的にはPSD,AI形式が主流で、JPG変換時に追加費用(約1,000円)がかかる場合もあります。
→印刷データを自作する時間とノウハウがある場合は、
データ入稿で印刷発注した方がコストを抑えられます。
まとめ|設計で伝票コストは半分になる
多くの見積を比べてきた経験からも、伝票の価格は「仕様」ではなく「設計の仕方」で大きく変わります。
数量・仕様・納期・入稿方法――この4つのバランスを整えるだけで、同じ伝票でも価格が半分近く変わることもあります。
| 見直し項目 | 削減効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 数量をまとめる | ◎ | 使い切れる量を見極める |
| 不要な加工を省く | ◎ | 現場運用で困らない範囲で |
| 納期をゆるく設定 | ○ | 必要日を逆算して余裕を持つ |
| 入稿を自作データ化 | ○ | データ作成ルールを守ること |
| 複写枚数を減らす | △ | 管理方法を確認してから判断 |
コストを抑える最短ルートは、「正しい設計」を知ることです。
もし、「どこを削ればいいかわからない」「使い勝手を保ったまま安くしたい」という方は、お気軽にご相談ください。
現場の状況に合わせて“ムダなく安く”作る方法を一緒に考えます。