伝票の電子化が進んでいる昨今ですが、紙の伝票のシェア率もいまだに高いのが現状です。
そこで悩ましくなるのが、
伝票を電子化させるのか手書きのまま使い続けるのかという選択です。
これに関しては電子化した伝票にも出書きの伝票にもそれぞれメリット・デメリットがあり、一概にどちらが正しいのかという答えはありません。
そこで、この記事では電子化・手書きそれぞれのメリット・デメリットを比較し、
どちらを使うのが適しているのかを選択できるよう解説していきます。

伝票は電子化or手書き?どちらがベストか徹底比較解説
1.結論:将来的には電子化が良い(ただし手書きも必要)

社員、取引先、顧客などの状況に大きく左右されるものの、効率化を考えるのであれば電子化した方が良いというのが結論になります。
しかし、手書きの伝票もまだまだ需要は高いです。
なぜなら、手書きから電子化への移行には高いコストと従業員の習熟が必要になるからです。
さらに、業務によっては手書きの伝票の方が使いやすいところもあります。
カンタンな表にまとめると以下の通りになります。
導入コスト | 維持コスト | 効率面 | 使いやすさ | |
---|---|---|---|---|
電子 | 高 | 中 | 高 | 中 |
手書き | 低 | 中 | 中 | 高 |
また、注意するべき点として、2025年現在「電子帳簿保存法」という法律が存在しています。
そのため、今後のことを考えると「将来的にはすべて電子化した方が良い」と結論されます。
電子帳簿保存法については次の項目で解説します。
2.比較の前に…「電子帳簿保存法」について知っておこう

「電子帳簿保存方法」は一言でいうと、
「国税関連の書類や帳簿を電子化して保存すること」という趣旨の法律です。
2022年1月施行。
改正を重ね、2024年4月に義務化されました。
企業や個人事業主の場合、決算関連書類や取引関連書類が該当します。
国税庁-電子帳簿保存法について
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf
各税法で原則紙での保存が義務付けられている帳簿書類について一定の要件を満たしたうえで電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。
「国税庁-電子帳簿保存法について」より一部抜粋
「結局、何をどうすればいいの?」ということになりますが、
簡単にまとめると、最低限「電子データでやり取りした書類は電子データのまま保存しておく」ことが必要になってきます。
しかし、「紙で受け取った書類を電子化する必要はない」面もあります。
紙でのやり取りを完全になくすものではないというわけです。
詳しい制度については国税庁のサイトにて確認できます。
■電子帳簿等保存制度特設サイト -国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
伝票も同様で、将来的にはすべて電子化される可能性もあります。
以下の記事はそれを頭の片隅に入れてみてください。
3.電子化した伝票の方が良い場合

先述したように、将来的には電子化が望まれます。
電子化のメリットはかなり大きいと言えるでしょう。
しかし、デメリットも大きいため、現状のシステム周りも同時に考慮する必要があります。
■電子化伝票のメリット
1)コスト削減
紙の伝票を購入する必要がなくなるため、コスト削減につながります。
伝票の購入代だけでなく、保管費や輸送費なども削減できます。
2)業務の効率化
データを電子化することで保存・保管・検索の手間が一気に解決します。
紙でファイリングした伝票を、書類の山から探したり、保管場所に悩まされることがなくなります。
また、ネット上でデータを共有できるシステムがあれば、
出張中やリモートワーク中でも、書類の確認や共有が可能です。
3)ヒューマンエラーの削減
電子化によってヒューマンエラーも削減できます。
例を挙げると、「会計の計算ミス」「記入内容の漏れ」「書類の紛失」などを防ぐことができます。
データ入力そのものを間違えていたり、データの誤削除などもありえますが、
人力での作業量が大幅に減り、確認・修正も容易になります。
■電子化伝票のデメリット
1)初期導入コストの発生
電子化するために機材が必要になります。
最低でも「パソコン」「ネットワーク環境」が必要になり、紙伝票を電子化伝票にするための「スキャナ」も用意する必要が出てくるかもしれません。
業務上機材がそろっているのであれば問題ありませんが、ゼロからそろえるとなると費用が掛かってしまいます。
2)運用・維持費の発生
機材を運用・維持するのにも費用が掛かってきます。
普段の業務で使用している場合なら問題はないのですが、電子化した伝票のためだけの機材となれば大きなデメリットとなります。
3)習熟までの時間が必要
恐らく最も大きな問題点となります。
なぜなら、既存の紙の伝票から電子化伝票に変えるとなると業務フローの大きな改善が必要になってくるからです。
そのため、「業務上は伝票を電子化した方がいいが、移行の手間を考えると…」といった腰が重い企業の話はよく聞きます。
また、電子化によりパソコン操作の知識や習熟が必要になるため、どうしても時間がかかってしまいます。
4.手書きの伝票の方が良い場合

手描きの伝票にもメリット・デメリットは存在します。
特に「使い慣れている」というのは何よりも大きなメリットとなります。
■手書き伝票のメリット
1)導入コストが安い
紙の伝票の最大のメリットと言えば、導入までのコストが安いことです。
基本的に文具店や百貨店で売っているので、入手には事欠きません。
大量に必要になる場合は、印刷会社に発注する必要性が出てきます。
▶詳しい解説はコチラ
伝票は市販品または印刷会社発注?どちらがベストか徹底比較解説
https://www.printfesta.com/column/cms/wp-admin/post.php?post=3219&action=edit
2)誰でも直感的に使いやすい
使いやすさの面でも、圧倒的に手書きの方が良いと言えます。
なぜなら、パソコンのスキルや機材などが必要としないからです。
使いやすさというのは、手書きの伝票を使う上でかなり大きなメリットとなります。
3)発行から受領までのプロセスが早い
発行から受領までのプロセスが早いことも、大きなメリットとなります。
特に飲食店や小売店など、来店客の回転率が高く、素早く伝票を発行しないといけないケースでは、手書きの伝票の方が使いやすいと言えるでしょう。
しかし、最近は電子化した伝票を導入している飲食店も多く存在する印象があります。
■手書き伝票のデメリット
1)保管スペースを必要とする
紙の伝票は保管スペースを必要とします。
保管だけならまだいいのですが、保存期間を定めている企業ではその間破棄することもできません。
2)人力ミスの発見が遅れやすい
手書きではどうしても人力ミスが発生してしまいます。
この点に関しては、電子化しても同じだと思われるかもしれません。
しかし、電子化した場合計算やソートなども自動で行われるため、人力ミスがあったとしても早期発見が可能となっています。
3)今後の法改正でどうなるかわからない
時代とともに法律も改正されていきます。
電子帳簿保存法も同様に、税務署長の事前承認が不要になったり、電子データの保存が義務化されたりと時代とともに変化しています。
急に全伝票の電子化を義務づけられることはありませんが、紙と電子化、どちらにも対応できるようにしておいた方がいいでしょう。
まとめ

以上、伝票の電子化と手書きの比較解説でした。
- 将来的には伝票の電子化が望ましいが、手書きの伝票もまだまだ需要がある
- 伝票を電子化するには初期費用がかかる
- 使いやすさは手書きの伝票の方が圧倒的に上
このあたりのポイントを抑えつつ、電子化と手書きのどちらにするかを選択していきましょう。