業種による契約書の種類

業種によって、よく使われる契約書の種類は異なりますが、
共通して使用されるものも多く存在します。また、「法定契
約書」という厳密な意味での分類があるわけではなく、特定
の法律によって作成が義務付けられている契約書や、特定の
業種で慣習的に締結される契約書などが存在します。
以下に、一般的な契約書の種類と、業種ごとの特徴的な契約
書について解説します。

多くの業種で共通して使用される主要な契約書には、以下のようなものがあります。

売買契約書
商品やサービスの売買を行う際に締結されます。

請負契約書
特定の業務の完成を目的として締結されます。
例:システム開発請負契約、建設工事請負契約。

委任契約書
特定の業務の遂行を委託する際に締結されます。
請負契約とは異なり、完成の義務ではなく、善管注意義務に基づいて業務を遂行します。
例:コンサルティング契約、顧問契約。

秘密保持契約書(NDA)
企業間で情報交換を行う際に、その情報を第三者に開示しないことを約束する契約です。

雇用契約書
労働者と企業の間で、労働条件などを定める契約です。

賃貸借契約書
不動産や動産を借りる際に締結されます。
例:オフィス賃貸借契約、車両賃貸借契約。

業務委託契約書
特定の業務を外部に委託する際に締結されます。
請負契約と委任契約の両方の性質を持つ場合があります。

労働者派遣契約書
労働者派遣を行う企業と派遣先企業の間に締結されます。

ライセンス契約書
ソフトウェアや知的財産の使用を許諾する際に締結されます。

取引基本契約書
継続的な取引を行う際に、取引の基本的な条件を定める契約です。
個別具体的な取引は、この基本契約書に基づいて個別の契約書(個別契約書)で定めます。

金銭消費貸借契約書
金銭の貸し借りを行う際に締結されます。

特定の業種で特に重要となる契約書や、その業種に特有の契約書があります。

① 製造業

製造委託契約書
部品の製造や製品の組み立てなどを外部に委託する際に使用されます。

OEM契約書
他社ブランドの製品を製造する際に締結されます。

品質保証契約書
製品の品質保証に関する取り決めを定めます。

② 建設業

建設工事請負契約書
建設工事の依頼者と請負業者の間で締結されます。

下請契約書
元請業者が下請業者に工事の一部を依頼する際に締結されます。

設計業務委託契約書
建築設計を外部に委託する際に締結されます。

③ IT・ソフトウェア開発業

ソフトウェア開発委託契約書
ソフトウェアの開発を外部に委託する際に締結されます。
請負契約の性質が強いことが多いです。

システム保守契約書
開発したシステムの保守・運用を依頼する際に締結されます。

SaaS利用規約/契約書
クラウドサービス(SaaS)を提供する際に、利用条件を定める契約です。

共同開発契約書
複数の企業が共同でソフトウェアや技術を開発する際に締結されます。

④ サービス業

コンサルティング契約書
コンサルティングサービスを提供する際に締結されます。

広告掲載契約書
ウェブサイトや媒体に広告を掲載する際に締結されます。

業務提携契約書
複数の企業が特定の業務で提携する際に締結されます。

⑤ 飲食業・小売業

フランチャイズ契約書
フランチャイズシステムを導入する際に、本部と加盟店の間で締結されます。

賃貸借契約書(店舗)
店舗の賃貸借に関する契約。
仕入契約書
食材や商品の仕入れに関する契約。

⑥ 不動産業

不動産売買契約書
不動産の売買を行う際に締結されます。

不動産賃貸借契約書
不動産の賃貸借を行う際に締結されます。

媒介契約書
不動産の売買や賃貸の仲介を依頼する際に締結されます。

管理委託契約書
不動産の管理を外部に委託する際に締結されます。

⑦ 医療・福祉業

医療機器売買契約書
医療機器の売買に関する契約。

介護サービス利用契約書
介護サービスを利用する際に締結されます。

⑧ 知的財産関連

ライセンス契約書(特許、商標、著作権など)
知的財産権の使用を許諾する際に締結されます。

共同研究開発契約書
複数の企業や機関が共同で研究開発を行う際に締結されます。

民法上の典型契約: 民法には「贈与」「売買」「交換」「消費貸借」「使用貸借」「賃貸借」「雇用」「請負」「委任」「寄託」「組合」「終身定期金」「和解」という13種類の典型契約(有名契約)が定められており、これらは多くの契約の基礎となります。

非典型契約: 上記の典型契約に当てはまらない、複数の典型契約の要素を組み合わせたものや、全く新しい内容の契約を「非典型契約(無名契約)」と呼びます。現代のビジネスでは、非典型契約が非常に多く存在します。

法律による規制: 特定の業種や取引においては、特定の法律によって契約書の作成が義務付けられていたり、記載事項が定められていたりする場合があります(例:特定商取引法における連鎖販売契約、建設業法における建設工事請負契約など)。

重要性の高い契約書: 金額が大きい取引、継続的な取引、知的財産が絡む取引など、トラブルになった場合の損害が大きい契約については、弁護士などの専門家に相談して作成・リーガルチェックを行うことが強く推奨されます。

業種や取引の内容によって、必要となる契約書の種類や記載すべき内容は大きく異なります。適切な契約書を作成することで、トラブルを未然に防ぎ、円滑なビジネスを行うことができます。