契約書と申込書との違い

申込書と契約書は、どちらもビジネスや個人間の取り引きで用いられる重要 な書類ですが、その役割と法的な性質において明確な違いがあります。相手 と取引をしたいときに、契約書なのか、申込書なのか、書面作成に迷うこと が良くあるものです。2つの違いを認識して作成することが大切です。以下 にその違いを紹介します。 

1)申込書(もうしこみしょ)

・役割: 契約の締結を希望する側が、相手方に対して「契約したい」という意思表示を示すための書面です。商品やサービスの購入、口座開設、会員登録など、多岐にわたる場面で利用されます。 

・作成主体: 基本的に、契約を希望する側(申込者)が単独で作成し、相手方に提出します。 

・法的拘束力: 申込書を提出しただけでは、原則として契約は成立しません。申込書の提出は、あくまで「申し込み」の段階であり、相手方がその申し込みを「承諾」して初めて契約が成立します。したがって、申込書には提出時点での法的拘束力は原則としてありません(ただし、後述の例外あり)。 

印紙税: 原則として、申込書は印紙税の課税文書には該当しません。 


2)契約書(けいやくしょ) 

役割: 当事者間で合意した内容を明確にし、契約が成立した事実とその内容を証明するための書面です。将来的なトラブルを避けるための証拠となり、契約内容に基づく権利義務を明確にします。 

作成主体: 契約当事者双方が共同で作成し、内容を確認して署名または押印します。

法的拘束力: 契約書が有効に作成された時点で、その内容に沿った契約が成立し、当事者双方に法的拘束力が発生します。つまり、契約書に記載された内容を守る義務が生じます。

印紙税: 契約書の種類によっては、印紙税法に基づき収入印紙の貼付が必要となる課税文書に該当します。

3)主な違いのまとめ

項目申込書契約書
役割契約締結の意思表示、情報の提供契約成立の証明、権利義務の明確化
作成主体契約を希望する側(申込者)が単独で作成契約当事者双方が共同で作成
法的拘束力原則として、提出時点では法的拘束力はない作成・署名押印した時点で法的拘束力が発生する
印紙税原則不要課税文書に該当する場合は必要
成立時期相手方の「承諾」によって契約が成立契約書作成・署名押印により契約が成立


4)注意点:申込書が「契約書」とみなされるケース 

たとえ「申込書」という名称であっても、その記載内容や形式によっては、実質的に契約書とみなされ、法的拘力が発生したり、印紙税の課税対象となったりする場合があります。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

申込書に契約当事者双方の署名または押印がある場合 

・基本契約書や約款などに基づき、一方の申込みにより自動的に契約が成立する旨が記載されている申込書 

・見積書などの相手方作成文書に基づく申込みで、申込書自体が承諾の事実を証明する目的で作成されている場合 

これらの場合は、名称が「申込書」であっても、実質的には「契約書」と同様の扱いになるため注意が必要です。 

簡潔に言えば、申込書は「契約したいです」という一方的な意思表示、契約書は「この内容で契約しました」という双方の合意と約束を文書化したもの、と考えると分かりやすいでしょう。