伝票は買う?作る? コスト・業務・印象から考える“最適な選び方”

「伝票って、買うのと作るのどっちがいいんだろう?」
そんな風に感じたことはありませんか?
市販は「少量で安い」、印刷発注は「まとめて安い」。
共通認識とされるこの考え方は、コストの面では正しいのですが、実は情報が不足しています。
なぜなら、実際のコスト構造はまったく違うからです。
本記事では、見落としがちな「使い切り方」や「業務フロー」「印象づくり」まで含めて、
自社に合った最適な伝票選びを整理します。
まず整理しよう:市販と印刷で“何が”違うのか

結論:目的と運用の違いで選択
結論から言えば、
「どちらが良いか」ではなく、”どんな使い方をするか“で結果がまるで変わります。
例えばコスト面。
市販品の伝票:1冊で500~800円前後(通販サイトの相場より)
→すぐに使いたい・少量で済むなら手軽で便利
印刷発注の伝票:1冊あたり300~400円前後(100冊単位のロット想定)
※印刷通販各社の実勢価格からの概算
→数量が増えるほど単価が下がる仕組み
パット見は市販の方が安く見えますが、実は“単価構造”が全く違います。
さらに印刷発注では、名入れや控え位置なども自由に調整できるため、
書きやすさの向上や保管効率の改善といった”価格以外の逆転ポイント”も生まれます。
ただし、少量かつ内容が固定された用途なら、市販伝票で十分です。
仕組みの違いを簡単に整理
| 比較項目 | 市販伝票 | 印刷会社発注 |
|---|---|---|
| 販売単位 | 店舗・通販で少量購入 | ロット単位で発注 (100冊~など) |
| コスト構造 | 一冊ごとの定価 | 版・刷り枚数で単価が変動 |
| 項目・デザイン | 汎用テンプレート | 自由設計 (社名・項目変更OK) |
| 複写・紙質 | 規格仕様のみ | まとめ発注で保管効率化 |
| 制度変更にも対応 (例:インボイス) | 手書き・追記対応 | 事前設計で登録番号や税率欄を反映可能 |
ここでは違いをざっくりと整理しています。
実際には、コストの仕組みや制度対応など、もう一歩踏み込むと選び方の基準がかわります。
詳しくは次章で解説します。
▼ 伝票印刷の教科書|種類・発注・設計・電子化まで印刷会社が徹底解説
→https://www.printfesta.com/column/denpyo-guide
印刷会社発注が選ばれる3つの場面
1)業務内容に合わせたいとき
記入欄や控え数を自社の作業手順に合わせられる。
2)コストを長期的に抑えたいとき
まとめて印刷する程単価が下がり、在庫管理もしやすくなる。
3)制度対応が必要な時(インボイスなど)
登録番号・税込み欄など、制度に必要な項目を最初から設計に組み込める。
もちろん、数量が少なく内容も固定している業種なら、市販伝票でも十分対応できます。
ただし、運用が複雑化したり制度対応が必要な時には、印刷発注の方が確実です。
次章では、この3つの場面をもう少し具体的に見ていきます。
インボイス登録事業者なら要チェック
インボイス制度対応は、今やほとんどの事業者が避けて通れません。
市販伝票のままだと、こんな”ちょっとした困りごと”が起こりがちです。
・登録番号を書く欄がなく、手書きで補う手間が増える
・税抜/税込表示を毎回書き分けるのが面倒
・記入欄が狭く、控えへの複写がずれる
・取引先から「インボイス記載のない伝票では困る」と指摘されることも
こうした悩みは、印刷会社発注で
「インボイス対応欄を含めた設計」にするだけで一気に解消できます。
制度対応と業務効率を同時に整える、一番現実的な方法です。
▼ 関連:電子インボイス制度との関係もチェック
インボイス制度の普及に合わせて、
今後は「電子インボイス(デジタル化)」への移行も少しずつ進んでいます。
紙と電子をどう両立するか、補助金を活かしてコストを抑える方法などは
→『紙と電子を使い分ける現実解|補助金を活かしてコスト削減を実現するハイブリッド運用』で詳しく紹介しています。
判断基準①:伝票のコストは“単価”ではなく“使い切り方”で見る

「安く見える」のは仕組みの違い
市販伝票と印刷発注――どちらが安いかは、見た目では判断できません。
なぜなら、価格の付き方そのものが違うからです。
| 種類 | 原価構造の特徴 |
|---|---|
| 市販伝票 | 既製品を大量生産して、流通コストを乗せて販売。 少量なら安く見える。 |
| 印刷発注 | 「版を作る」「印刷する」という工程コスト(固定費+変動費)。 部数が増えるほど単価が下がる。 |
印刷物には、最初に『版代+準備コスト』という固定費がかかります。
ただし、その後は「刷るほど1冊当たりの原価が下がる」構造になっています。
一方、市販品は固定費をメーカーがまとめて吸収しているぶん、
単価は一定だが、都度購入の積み上げが重くなるという違いがあります。
実際にどう変わるか:ざっくりシミュレーション
例として、
一般的に多く使われている『B6サイズ・二枚複写(1冊50組)』の伝票を想定してみましょう。
| 項目 | 市販伝票 | 印刷発注伝票 |
|---|---|---|
| 1冊当たりの価格 | 約430円 | 約6,200円(※1冊発注時) |
| 30冊発注時 | 約12,900円(430円×30冊) | 約18,800円 |
| 60冊発注時 | 約25,800円 | 約22,000円 |
| 100冊発注時 | 約43,300円 | 約29,000円 |
| 単価の傾向 | 常に一定(一冊単価変わらず) | 数量が増えるほど単価が下がる |
| 使い切りコスト | 都度購入で在庫が切れやすい | まとめて作ると補充がラク |
※印刷発注価格は、複数の印刷通販サイトの実勢価格からの概算
※加工・データ入稿方式・納期によって前後
具体的に価格が逆転する冊数は、
伝票の種類、加工、デザイン、納期など様々な要素が含まれるため、一概に言えるものではありません。
しかし、どのあたりから市販品による”都度買いの無駄“となってくるのか。
そこを意識出来るかどうかが、コスト管理の分かれ目になってきます。
隠れコストとリスクは「どちらにもある」
単価の比較だけでなく、現場ではお金に見えにくいコストも発生します。
| 観点 | 市販伝票の見えないコスト | 印刷発注の見えないコスト |
|---|---|---|
| 手間・時間 | 在庫切れの度に購入手続き(年数回) 社判が必要な場合、毎回押す必要性 | 初回発注時に使用すり合わせ・校正確認が必要 |
| 品質・リスク | 書き損じ・印字ズレ・控え紛失などの人的ミス | 紙や加工の指定を誤ると再印刷コストが発生 |
| 在庫・保管 | 同一様式の伝票が生産停止になると継続使用不可 | まとめ発注により、一時的な保管スペースが必要 |
どちらにも”価格表にでないコスト”があります。
ただし、印刷発注は最初に手間がかかる分、長期的には安定したコスト構造に変えやすいのが特徴です。
コスト構造をさらに詳しく知りたい方はこちら
伝票の圧倒的コストダウン?印刷会社が“数値”で解説するコスト設計のポイント
判断基準②:伝票を業務フローに合わせて選ぶ

コスト以外にも、「業務の動きにどれだけ合っているか」を選択する基準にしましょう。
伝票は、現場での作業や記入の流れをそのまま紙に落とし込んだもの。
だからこそ、”噛み合わせの悪さ”があると、書き間違い・転記・確認の手間といった実務コストが静かに積み上がっていきます。
ここでは、「現場の流れ」「控えの使い方」「制度対応」の3つの観点から、
どんな業務がどちらに向いているかを整理します。
現場の流れ|記入手順と欄の順序
電話受付、現場作業、店舗対応など、伝票を書く流れは業種によって異なります。
しかし市販伝票では、その順序が現場の実態とずれていることも少なくありません。
例えば、
・電話で「お名前→内容→数量→金額」の順で聞くのに、
伝票は「日付→数量→内容→担当者」になっている
・現場で作業内容を書いている途中で、単価欄に戻らないといけない
こうした小さなずれは、「聞き返し」や「書き直し」の原因になります。
▼市販伝票が向くのは?
その日によって書く人や手順が変わるような、小規模・臨機応変な現場。
テンプレに合わせて自由に使いまわせる柔軟さが強みです。
▼印刷発注が向くのは?
手順が決まっていて、誰が書いても同じ流れで進むチームや店舗。
欄の順序を業務に合わせて設計できるので、書き直しや聞き返しが減ります。
→現場の動きが固定されているほど、設計型(印刷)が効果を発揮します。
控えの使い方|誰がどう使うか
複写伝票は「お客様控え」「社内控え」「会計控え」など、複数の用途を兼ねます。
そのため、控えを誰がどう使うかによって、最適な構成が変わります。
たとえば、
・会計担当は金額欄だけみたいのに、手書きメモばかりが残っている
・お客様控えには会社印や担当者名が入らない
・控えの位置がずれて複写がかすれる
これらは全て”業務フローのズレ”によるものです。
控えは「誰が、何を確認するために使うのか」を前提に設計すると、
確認・照合・記録がスムーズになり、伝票の役割がぐっと明確になります。
▼市販伝票が向くのは?
自分で確認するだけ、または一時的な記録が目的の場合。
既製のシンプル構成で十分です。
▼印刷発注が向くのは?
会計・上長・取引先など、複数の立場が同じ伝票を使う場合。
控えごとに情報を変えられるため、照合作業や確認がスムーズになります。
→”誰が見る控えか”を意識すると、必要な欄が見えてきます。
制度対応|“書き足し”や“再計算”が増えていないか
インボイス制度や軽減税率対応が始まって以降、伝票の注文に変化が見られました。
・「登録番号の欄が欲しい」
・「税率を分けて書きたい」
といった、設計にかかわる注文です。
本来であれば、制度に合わせて伝票自体を見直すべきところを、
“備考欄に追記”で対応しているケースが多く、
結果的に書き足し・再計算の手間が恒常化してしまうことも。
これもフローとのズレの一種です。
制度対応を”業務に組み込む”形で設計すれば、手間も記入ミスもぐっと減らせます。
▼市販伝票が向くのは?
免税事業者や個人店舗など、制度対応の負荷が小さい場合。
追記での対応でも十分実用的です。
▼印刷発注が向くのは?
登録番号欄や税率区分を設けたい、書き足しミスを防ぎたい場合。
設計段階で反映できるので、制度対応と業務効率を両立できます。
→手で補う作業が多いなら、それは設計型(=印刷発注)に切り替えるサインです。
まとめ|業務が安定しているほど、設計型が強い
柔軟に対応したい現場は市販で十分です。
しかし、手順や担当が決まっている環境ほど、印刷発注での最適化が効いてきます。
現場の流れが安定しているなら、伝票も”自社仕様”に整える時期です。
たった1行の書き直しをなくすだけで、1年後の効率は驚くほど変わります。
▼ 伝票印刷の教科書|設計で変わる:使いやすい伝票の作り方
→ https://www.printfesta.com/column/denpyo-guide/#h4
判断基準③:見た目・紙質・印象を揃えたいか

伝票は“社内文書”でありながら、“お客様に見られる帳簿”でもあります。
ここでは、「見た目」「紙質」「統一感」の3つの観点から、
どんな条件なら印刷発注が有効なのかを整理します。
見た目|レイアウト設計は「信頼性の設計」
市販品は項目や罫線が固定で、用途に合わない欄を消して使うケースも少なくありません。
一方、印刷発注なら罫線や文字の配置を業務内容に合わせて設計でき、記入ミスや読み違いを減らすことができます。
| 観点 | 市販品 | 印刷発注 |
|---|---|---|
| 文字サイズ | 固定(可読性に限界) | 内容に合わせて最適化可能 |
| 罫線設計 | 汎用仕様 | 桁数・項目に合わせて設計 |
| 印字精度 | テンプレ依存 | 自社フォームと連動設計可能 |
▶判断ポイント:
チェック項目が多い/複数人で使う/お客様提出用がある
→見やすさの”制度設計”ができる印刷発注が有効。
紙質|見た目より再現性で選ぶ
紙の違いは”書き心地”だけでなく、発色・保存性・複写精度に影響します。
また、同じ白紙でも、紙種・厚み・塗工の違いで印象と実用性が大きく変わります。
たとえば、
・感熱紙:読みやすくスピーディ。ただし長期保存には不向き
・ノーカーボン紙:複写感度が高く、控えが鮮明
・上質紙:印影・スタンプがくっきり残る
印刷会社では用途に応じて紙種を選べるため、「読みやすさ」と「保存性」の両立が可能です。
▶判断ポイント:
長期保管/証跡管理/押印の再現性を求める
→紙質を指定できる印刷発注が有効。
紙の種類についてはこちらで詳しく解説しています。
▼ 伝票の種類と違いが一目でわかる|単式・複写・感熱など紙タイプ別にやさしく解説
→https://www.printfesta.com/column/denpyo-type
統一感|ブランド統一は「帳簿の一貫性」で決まる
伝票や請求書など、日々目にする帳簿の統一感は、”社内外の信頼度”を左右する隠れた要素です。
市販品ではデザインや書式がばらつきやすく、帳簿全体の印象が揃いません。
印刷発注なら社名・ロゴ・色味・レイアウトを統一し、会社としての一貫性を保てます。
| 状況 | 最適な選択 |
|---|---|
| 社内処理のみ・一時利用中心 | 市販品で十分 |
| 顧客提出・取引書類中心 | 印刷発注(帳簿設計) |
| 名刺・封筒との統一を図りたい | 印刷発注(ブランド統一) |
▶判断ポイント:
取引先提出が多い/他帳簿(請求書・見積書など)と揃えたい
→ブランド統一の観点から印刷発注が有効
まとめ|「見られ方」を重視するなら発注、「使うだけ」なら市販
市販品は手軽で在庫もコストも安定し、少数だとコストも少なく済みます。
そのため、社内利用や一時的記録中心なら市販品で十分と言えます。
一方、印刷発注は「設計・紙質・印象」を”意図通りにコントロールできる自由度”が強み。
取引先に提出する/複数人で扱う/帳簿を統一したいといった場合には、印刷発注が最適です。
要するに、
・「社内で使う」なら市販伝票
・「社外に見せる」なら印刷発注伝票
・「会社として整えたい」なら印刷発注一択
“誰が見る伝票なのか”を基準に選ぶと、コストも印象も最適化できます。
まとめ|「どちらを選ぶか」より、”どう使うか”で決めよう
ここまで見てきたように、
市販伝票と印刷発注にはそれぞれ明確な強みと限界があります。
| 判断軸 | 市販品が向くケース | 印刷発注が向くケース |
|---|---|---|
| コスト | 少量・短期間の利用 | 継続使用・中長期運用 |
| 業務フロー | 手順が都度変わる現場 | 手順・担当が固定された業務 |
| 印象・統一感 | 社内使用中心 | 取引書類・顧客提出中心 |
短期的な利便性を取るなら市販伝票、
中長期の効率化・信頼性を重視するなら印刷発注。
選択の基準は”価格の安さ”よりも”使い方の安定性”にあります。
▼伝票選びに迷ったらこちらもチェック▼
伝票印刷の教科書|設計で変わる:使いやすい伝票の作り方
https://www.printfesta.com/column/denpyo-guide/