伝票は買う?作る? コスト・業務・印象から考える“最適な選び方”

市販品と印刷発注を比較し、コスト・業務・印象の3軸から最適な伝票を選ぶ方法を紹介するアイキャッチ画像。

「伝票って、買うのと作るのどっちがいいんだろう?」
そんな風に感じたことはありませんか?

市販は「少量で安い」、印刷発注は「まとめて安い」。
共通認識とされるこの考え方は、コストの面では正しいのですが、実は情報が不足しています。

なぜなら、実際のコスト構造はまったく違うからです。

本記事では、見落としがちな「使い切り方」や「業務フロー」「印象づくり」まで含めて、
自社に合った最適な伝票選びを整理します。

まず整理しよう:市販と印刷で“何が”違うのか

市販品と印刷発注を「コスト」「業務フロー」「設計・信頼性」の3軸から比較し、使い方で選ぶ判断基準を整理した要約図。

結論:目的と運用の違いで選択

結論から言えば、
「どちらが良いか」ではなく、”どんな使い方をするか“で結果がまるで変わります。

例えばコスト面。

市販品の伝票:1冊で500~800円前後(通販サイトの相場より)
→すぐに使いたい・少量で済むなら手軽で便利

印刷発注の伝票:1冊あたり300~400円前後(100冊単位のロット想定)
※印刷通販各社の実勢価格からの概算
→数量が増えるほど単価が下がる仕組み

パット見は市販の方が安く見えますが、実は“単価構造”が全く違います。

さらに印刷発注では、名入れや控え位置なども自由に調整できるため、
書きやすさの向上保管効率の改善といった”価格以外の逆転ポイント”も生まれます。

ただし、少量かつ内容が固定された用途なら、市販伝票で十分です。


仕組みの違いを簡単に整理

比較項目市販伝票印刷会社発注
販売単位店舗・通販で少量購入ロット単位で発注
(100冊~など)
コスト構造一冊ごとの定価版・刷り枚数で単価が変動
項目・デザイン汎用テンプレート自由設計
(社名・項目変更OK)
複写・紙質規格仕様のみまとめ発注で保管効率化
制度変更にも対応
(例:インボイス)
手書き・追記対応事前設計で登録番号や税率欄を反映可能

ここでは違いをざっくりと整理しています。

実際には、コストの仕組みや制度対応など、もう一歩踏み込むと選び方の基準がかわります。
詳しくは次章で解説します。

▼ 伝票印刷の教科書|種類・発注・設計・電子化まで印刷会社が徹底解説
→https://www.printfesta.com/column/denpyo-guide


印刷会社発注が選ばれる3つの場面

1)業務内容に合わせたいとき
記入欄や控え数を自社の作業手順に合わせられる。

2)コストを長期的に抑えたいとき
まとめて印刷する程単価が下がり、在庫管理もしやすくなる。

3)制度対応が必要な時(インボイスなど)
登録番号・税込み欄など、制度に必要な項目を最初から設計に組み込める。

もちろん、数量が少なく内容も固定している業種なら、市販伝票でも十分対応できます。
ただし、運用が複雑化したり制度対応が必要な時には、印刷発注の方が確実です。

次章では、この3つの場面をもう少し具体的に見ていきます。


インボイス登録事業者なら要チェック

インボイス制度対応は、今やほとんどの事業者が避けて通れません。
市販伝票のままだと、こんな”ちょっとした困りごと”が起こりがちです。

・登録番号を書く欄がなく、手書きで補う手間が増える
・税抜/税込表示を毎回書き分けるのが面倒
・記入欄が狭く、控えへの複写がずれる
・取引先から「インボイス記載のない伝票では困る」と指摘されることも

こうした悩みは、印刷会社発注で
「インボイス対応欄を含めた設計」にするだけで一気に解消できます。

制度対応と業務効率を同時に整える、一番現実的な方法です。

関連:電子インボイス制度との関係もチェック
インボイス制度の普及に合わせて、
今後は「電子インボイス(デジタル化)」への移行も少しずつ進んでいます。

紙と電子をどう両立するか、補助金を活かしてコストを抑える方法などは
→『紙と電子を使い分ける現実解|補助金を活かしてコスト削減を実現するハイブリッド運用』で詳しく紹介しています。


判断基準①:伝票のコストは“単価”ではなく“使い切り方”で見る

市販品と印刷発注のコスト構造を比較し、ロット数が増えると印刷発注の方が割安になる“逆転ポイント”を示した要約図。

「安く見える」のは仕組みの違い

市販伝票と印刷発注――どちらが安いかは、見た目では判断できません。
なぜなら、価格の付き方そのものが違うからです。

種類原価構造の特徴
市販伝票既製品を大量生産して、流通コストを乗せて販売。
少量なら安く見える。
印刷発注「版を作る」「印刷する」という工程コスト(固定費+変動費)。
部数が増えるほど単価が下がる。

印刷物には、最初に『版代+準備コスト』という固定費がかかります。
ただし、その後は「刷るほど1冊当たりの原価が下がる」構造になっています。

一方、市販品は固定費をメーカーがまとめて吸収しているぶん、
単価は一定だが、都度購入の積み上げが重くなるという違いがあります。


実際にどう変わるか:ざっくりシミュレーション

例として、
一般的に多く使われている『B6サイズ・二枚複写(1冊50組)』の伝票を想定してみましょう。

項目市販伝票印刷発注伝票
1冊当たりの価格約430円約6,200円(※1冊発注時)
30冊発注時約12,900円(430円×30冊)約18,800円
60冊発注時約25,800円約22,000円
100冊発注時約43,300円約29,000円
単価の傾向常に一定(一冊単価変わらず)数量が増えるほど単価が下がる
使い切りコスト都度購入で在庫が切れやすいまとめて作ると補充がラク
※仕様:B6サイズ/2枚複写50組1冊
※印刷発注価格は、複数の印刷通販サイトの実勢価格からの概算
※加工・データ入稿方式・納期によって前後

具体的に価格が逆転する冊数は、
伝票の種類、加工、デザイン、納期など様々な要素が含まれるため、一概に言えるものではありません。

しかし、どのあたりから市販品による”都度買いの無駄“となってくるのか。
そこを意識出来るかどうかが、コスト管理の分かれ目になってきます。


隠れコストとリスクは「どちらにもある」

単価の比較だけでなく、現場ではお金に見えにくいコストも発生します。

観点市販伝票の見えないコスト印刷発注の見えないコスト
手間・時間在庫切れの度に購入手続き(年数回)
社判が必要な場合、毎回押す必要性
初回発注時に使用すり合わせ・校正確認が必要
品質・リスク書き損じ・印字ズレ・控え紛失などの人的ミス紙や加工の指定を誤ると再印刷コストが発生
在庫・保管同一様式の伝票が生産停止になると継続使用不可まとめ発注により、一時的な保管スペースが必要
価格表に出ない”隠れコスト比較”

どちらにも”価格表にでないコスト”があります。
ただし、印刷発注は最初に手間がかかる分、長期的には安定したコスト構造に変えやすいのが特徴です。

コスト構造をさらに詳しく知りたい方はこちら
伝票の圧倒的コストダウン?印刷会社が“数値”で解説するコスト設計のポイント


判断基準②:伝票を業務フローに合わせて選ぶ

現場の業務フローに合わせて伝票を選ぶために必要な確認事項を説明した図

コスト以外にも、「業務の動きにどれだけ合っているか」を選択する基準にしましょう。

伝票は、現場での作業や記入の流れをそのまま紙に落とし込んだもの。
だからこそ、”噛み合わせの悪さ”があると、書き間違い・転記・確認の手間といった実務コストが静かに積み上がっていきます。

ここでは、「現場の流れ」「控えの使い方」「制度対応」の3つの観点から、
どんな業務がどちらに向いているかを整理します。


現場の流れ|記入手順と欄の順序

電話受付、現場作業、店舗対応など、伝票を書く流れは業種によって異なります。
しかし市販伝票では、その順序が現場の実態とずれていることも少なくありません。

例えば、

・電話で「お名前→内容→数量→金額」の順で聞くのに、
 伝票は「日付→数量→内容→担当者」になっている
・現場で作業内容を書いている途中で、単価欄に戻らないといけない

こうした小さなずれは、「聞き返し」や「書き直し」の原因になります。

市販伝票が向くのは?
その日によって書く人や手順が変わるような、小規模・臨機応変な現場。
テンプレに合わせて自由に使いまわせる柔軟さが強みです。

印刷発注が向くのは?
手順が決まっていて、誰が書いても同じ流れで進むチームや店舗。
欄の順序を業務に合わせて設計できるので、書き直しや聞き返しが減ります。

→現場の動きが固定されているほど、設計型(印刷)が効果を発揮します。


控えの使い方|誰がどう使うか

複写伝票は「お客様控え」「社内控え」「会計控え」など、複数の用途を兼ねます。
そのため、控えを誰がどう使うかによって、最適な構成が変わります。

たとえば、

・会計担当は金額欄だけみたいのに、手書きメモばかりが残っている
・お客様控えには会社印や担当者名が入らない
・控えの位置がずれて複写がかすれる

これらは全て”業務フローのズレ”によるものです。

控えは「誰が、何を確認するために使うのか」を前提に設計すると、
確認・照合・記録がスムーズになり、伝票の役割がぐっと明確になります。

市販伝票が向くのは?
自分で確認するだけ、または一時的な記録が目的の場合。
既製のシンプル構成で十分です。

印刷発注が向くのは?
会計・上長・取引先など、複数の立場が同じ伝票を使う場合。
控えごとに情報を変えられるため、照合作業や確認がスムーズになります。

→”誰が見る控えか”を意識すると、必要な欄が見えてきます。


制度対応|“書き足し”や“再計算”が増えていないか

インボイス制度や軽減税率対応が始まって以降、伝票の注文に変化が見られました。

・「登録番号の欄が欲しい」
・「税率を分けて書きたい」

といった、設計にかかわる注文です。

本来であれば、制度に合わせて伝票自体を見直すべきところを、
“備考欄に追記”で対応しているケースが多く、
結果的に書き足し・再計算の手間が恒常化してしまうことも。

これもフローとのズレの一種です。

制度対応を”業務に組み込む”形で設計すれば、手間も記入ミスもぐっと減らせます。

▼市販伝票が向くのは?
免税事業者や個人店舗など、制度対応の負荷が小さい場合。
追記での対応でも十分実用的です。

▼印刷発注が向くのは?
登録番号欄や税率区分を設けたい、書き足しミスを防ぎたい場合。
設計段階で反映できるので、制度対応と業務効率を両立できます。

→手で補う作業が多いなら、それは設計型(=印刷発注)に切り替えるサインです。


まとめ|業務が安定しているほど、設計型が強い

柔軟に対応したい現場は市販で十分です。
しかし、手順や担当が決まっている環境ほど、印刷発注での最適化が効いてきます。

現場の流れが安定しているなら、伝票も”自社仕様”に整える時期です。
たった1行の書き直しをなくすだけで、1年後の効率は驚くほど変わります。

▼ 伝票印刷の教科書|設計で変わる:使いやすい伝票の作り方
https://www.printfesta.com/column/denpyo-guide/#h4


判断基準③:見た目・紙質・印象を揃えたいか

伝票の見た目・紙質・統一感という3つの観点から、市販品と印刷発注の違いを比較した判断基準の要約図

伝票は“社内文書”でありながら、“お客様に見られる帳簿”でもあります。

ここでは、「見た目」「紙質」「統一感」の3つの観点から、
どんな条件なら印刷発注が有効なのかを整理します。


見た目|レイアウト設計は「信頼性の設計」

市販品は項目や罫線が固定で、用途に合わない欄を消して使うケースも少なくありません。

一方、印刷発注なら罫線や文字の配置を業務内容に合わせて設計でき、記入ミスや読み違いを減らすことができます。

観点市販品印刷発注
文字サイズ固定(可読性に限界)内容に合わせて最適化可能
罫線設計汎用仕様桁数・項目に合わせて設計
印字精度テンプレ依存自社フォームと連動設計可能

▶判断ポイント:
チェック項目が多い/複数人で使う/お客様提出用がある
見やすさの”制度設計”ができる印刷発注が有効


紙質|見た目より再現性で選ぶ

紙の違いは”書き心地”だけでなく、発色・保存性・複写精度に影響します。
また、同じ白紙でも、紙種・厚み・塗工の違いで印象と実用性が大きく変わります。

たとえば、

感熱紙:読みやすくスピーディ。ただし長期保存には不向き
ノーカーボン紙:複写感度が高く、控えが鮮明
上質紙:印影・スタンプがくっきり残る

印刷会社では用途に応じて紙種を選べるため、「読みやすさ」と「保存性」の両立が可能です。

▶判断ポイント:
長期保管/証跡管理/押印の再現性を求める
→紙質を指定できる印刷発注が有効。

紙の種類についてはこちらで詳しく解説しています。
▼ 伝票の種類と違いが一目でわかる|単式・複写・感熱など紙タイプ別にやさしく解説
→https://www.printfesta.com/column/denpyo-type


統一感|ブランド統一は「帳簿の一貫性」で決まる

伝票や請求書など、日々目にする帳簿の統一感は、”社内外の信頼度”を左右する隠れた要素です。

市販品ではデザインや書式がばらつきやすく、帳簿全体の印象が揃いません。
印刷発注なら社名・ロゴ・色味・レイアウトを統一し、会社としての一貫性を保てます。

状況最適な選択
社内処理のみ・一時利用中心市販品で十分
顧客提出・取引書類中心印刷発注(帳簿設計)
名刺・封筒との統一を図りたい印刷発注(ブランド統一)

▶判断ポイント:
取引先提出が多い/他帳簿(請求書・見積書など)と揃えたい
→ブランド統一の観点から印刷発注が有効


まとめ|「見られ方」を重視するなら発注、「使うだけ」なら市販

市販品は手軽で在庫もコストも安定し、少数だとコストも少なく済みます。
そのため、社内利用や一時的記録中心なら市販品で十分と言えます。

一方、印刷発注は「設計・紙質・印象」を”意図通りにコントロールできる自由度”が強み。
取引先に提出する/複数人で扱う/帳簿を統一したいといった場合には、印刷発注が最適です。

要するに、

・「社内で使う」なら市販伝票
・「社外に見せる」なら印刷発注伝票
・「会社として整えたい」なら印刷発注一択

“誰が見る伝票なのか”を基準に選ぶと、コストも印象も最適化できます。


まとめ|「どちらを選ぶか」より、”どう使うか”で決めよう

ここまで見てきたように、
市販伝票と印刷発注にはそれぞれ明確な強みと限界があります。

判断軸市販品が向くケース印刷発注が向くケース
コスト少量・短期間の利用継続使用・中長期運用
業務フロー手順が都度変わる現場手順・担当が固定された業務
印象・統一感社内使用中心取引書類・顧客提出中心

短期的な利便性を取るなら市販伝票、
中長期の効率化・信頼性を重視するなら印刷発注。

選択の基準は”価格の安さ”よりも”使い方の安定性”にあります。

伝票選びに迷ったらこちらもチェック
伝票印刷の教科書|設計で変わる:使いやすい伝票の作り方
https://www.printfesta.com/column/denpyo-guide/